固有名詞は苦手なのかもしれない。

「ライ悟空」? あ、両国のこと? ということは、「アクサ」はたぶん、浅草のことだろう。固有名詞は苦手なのかもしれない。ポケトークは3文にわたるボリュームでも、滞ることなく翻訳していたが、後日確認してみると、女性がしゃべった話について一部翻訳が抜けている箇所があった。

今度は逆に、彼女から質問をされた。

「私たちは何人かの日本人が彼らの口にマスクをかけるのを見ました。なぜ彼らがそれを使うのか知りたいです」

マスクが不思議なの? えっと、花粉症をわかりやすく説明すると……。

「花粉によってアレルギーが引き起こされるからです」

首を縦に動かしながら納得した表情を見せてくれた。

「デバイスの使い勝手はどうですか」

「それはおそらく使用された問題のいくつかの用途ですが、それは私がここで使用するためにダウンロードしたこの無料アプリよりもうまく機能するようです」

ポケトークは、スマホアプリよりも性能が良いという評価だった。

せっかく話せるんだから、外国の方に素敵な体験をして帰ってもらいたい。浅草寺の名物、常香炉を体験しないかと誘ってみよう。

カップルで来ていた外国人に声をかけると「ええ、どうしていいんじゃないの?」との返事。翻訳は怪しいが、画面に表示された原文と合わせて理解することができた。「体の悪いところに煙をかけると良くなると信じられています」と説明し、一緒に煙を被る。

感想を尋ねると、苦笑いとともに「どこでも喫煙」との答え。ちょっと滑稽な表現だが、言いたいことはわかった。

これがあれば、誰とでも楽に話せると思っていたが、直訳から趣旨を読み取る読解力が必要であり、話すときもポケトークが翻訳しやすい、易しい日本語を意識するので、結局頭は使う。

また、本体の操作が追いつかず相手の発言を拾いきれなかった場面もあった。そして通常版よりも高いeSIM内蔵版(定価2万9880円)を使用したのだが、屋外なのに電波を拾ってくれず、使用できない時間があった。

とはいっても、もしポケトークがなければ、今日出会った人の誰ともコミュニケーションを取ることはできなかった。今後のアップデートにより完全なコミュニケーションが取れる日もそう遠くないかもしれない。