とはいえ、“昔ながらの歯医者”が保険診療のみで1日30人の患者を診た場合、収入はおよそ100万円前後。医師と聞いて想像する華やかな生活とはほど遠いかもしれませんが、土地建物や機器のローンは払い終えていて、スタッフの人件費もないため、生活には困らないレベルです。

生活すら成り立ちません

しかし、これが土地代やテナント料に加えて機器のローン・レンタル代、スタッフの人件費などに追われた開業医だったら? 土地代にもよりますが毎月の支払いは100万円を超える場合もあり、生活すら成り立ちません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/GM Stock Films)

そのため、現在の歯科医師は“医師としての視点”だけではなく“経営者の視点”も持つ必要があるといえます。

東北地方で新規開業したある歯科医院は、駅前に新築の物件と、好条件でスタートを切ったにもかかわらず、平均して1日10人前後の患者しか獲得することができず、ほどなく倒産してしまいました。

この歯科医院は医院の文字が駅利用者にしか見えない角度で小さく書かれていたため、地域住民からはそもそも認知がされていなかったのです。HPもありましたが、検索エンジンで上位に表示されるようにする、“SEO対策”もなされていませんでした。歯科医師としての腕を発揮する前に、患者に選んでもらうことができなかったのです。

この物件で新たに開業した歯科医院に対して私たちは、コンビニのような大きな看板を設置し、幹線道路や歩行者からも認知できるよう指導を行いました。また、HPもただ作るだけでなく、SEO対策を徹底。その結果、立地と物件が同じにもかかわらず、新患が月に100人の繁盛医院となりました。これは他業種では当たり前ともいえる経営の基本的なことですが、今まで経営に目を向けずとも成り立っていた歯科業界では “人を相手に商売をする”という視点の欠如した医院も多く見られます。逆に言えば、歯科経営はまだまだ努力が報われる環境である、ともいえるでしょう。

(写真=iStock.com)
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