「誰でも儲かる」時代の終焉

過当競争ともいえる歯科経営。厳しい状況の中、成功させる秘訣はあるのか。横浜で歯科経営コンサルを行う経営戦略研究所の岩渕龍正代表に歯科経営の極意を伺った――。

現在の歯科経営は「どのようにして生き残っていくか」というサバイバル状態です。今までのように患者数に対して歯科医師の数が適切であれば、あまり配慮せずとも経営は可能でした。立地や宣伝に力を入れずとも患者が来るため、極端な話「誰がやっても成功する」状況でした。

歯科経営コンサルタント 岩渕龍正氏

ですが、歯科医師が増加し競争が始まった現在は、駅前や幹線道路から離れた、アクセスの悪い医院は淘汰される時代。特に「誰がやっても成功する」時代の医院は、自宅兼医院を建て、集客よりも自宅の住みやすさを重視している場合も多く、難しい状況に直面していることでしょう。

また、歯科は眼科や皮膚科よりも1人あたりの診療時間が長くなることも、経営が行き詰まる一因となっています。歯科の診察時間は平均して約30分。これでは、多くても1時間に3~4人、1日30人程度の患者しか診ることができません。

効率化のためには診療台を増やしてスタッフを雇い、併行して診察することがセオリーですが、先述のような“昔ながらの歯医者”では、スタッフをほとんど雇わず1~2人で実務を行うことも多く、必然的に収入は頭打ちに。

人材を制するものが、歯科経営を制する

効率化のためにはスタッフを雇うことが必須となりますが、医院に対して歯科衛生士の数は足りていないため、雇いたくても雇えない状況。例えば、都内で新卒未経験のスタッフを採用するのに、月給25万円、時給1800円という条件を出しても応募ゼロ、ということは珍しくありません。専用の求人サイトに月10万円前後を支払って広告を出し、1通1000円ほどかかるスカウトメールを送って、ようやくスタッフが来るか来ないか。歯科医師が歯科衛生士に頭を下げている、という現象が起こっています。今後はさらにこういった現象は加速し、人材採用を制するものが、歯科経営で成功する状況になると私は読んでいます。

ですが、苦労してもスタッフを雇えるなら、まだいいほう。1日フル稼働して診察した医師は肉体的にも精神的にも疲労しており、条件を練って求人を出す、という作業まではとても手が回らない。現状を打破したくても、人を集められずに負のスパイラルに陥ってしまう歯科も多いです。