名刺をもらったときに、「ああ、お名前は◯◯とお読みするんですね」「どの地方に多い名字なんですか」などと、名前そのものを話題にして覚えるのも一法でしょう。

1度にたくさんの人と会ったときは、「最初はざっくり・だんだん細かく」の方法で覚えます。まずは男性と女性に分けてみる。次に、名字の最初の音を五十音順で分けていく。分類した名簿を繰り返し見ていると、自然に目に入ってきたり、楽に覚えられる名前が出てきたりするので、まずそういう覚えやすそうな名前だけを覚えながら全体を繰り返して読み、だんだんと覚える名前を増やしていきます。

しっかり覚えたいときは、見たものの「想起」、つまり「思い出す」ことの繰り返しが効果的です。

記憶力がいいと言われる人のなかには、「物事が終わった瞬間に想起する」ことを習慣にしている人が少なくありません。たとえば会議を終えたら、その瞬間にその会議に誰がいて何を話し、どんな結論が出たかを思い返して記憶にとどめておく。本を読み終わったらすぐ目次を見直して、内容を短時間でおさらいする。

そうした習慣を身につけるだけで、記憶に残る量は一気に増えます。

情報を集めて「入り口」を増やす

名前を単独で覚えるのではなく、勤務先の社名はもちろん、その人の出身地、出身校、学生時代のスポーツなどさまざまな情報を次々に付加していき、思い出しやすくする方法もあります。

「覚える」とはすなわち「思い出せる」ということです。ひとかたまりのセットになった情報の何かが「フック」となり、自分の意識に引っかかれば、セットになった情報全体にアクセスできます。いわば思い出すための「入り口」を増やすやり方です。

営業先の人の名前を覚える場合なら、仕事関連の情報がいろいろあるでしょうし、「ご両親はなぜその名前を選んだのですか」と相手の下の名前について尋ねることでも、名前に関連する新たな情報が加わります。

情報を集める過程で相手が自分の知人の知り合いだったとか、自分と同じ趣味を持っていたといったお互いの関連性が深くなってくると、さらに記憶にとどめやすくなります。

「繰り返し」とともに記憶と関係するのがインパクト(情動)です。経験に感動や驚きがともなっていると、インパクトが強いため、記憶に残りやすいものです。

人がものを覚えるメカニズムには、自分の実体験として記憶する「エピソード記憶」と、本を読むなどして知識として覚える「知識記憶」がありますが、インパクトが強く覚えやすいのはエピソード記憶のほうです。