脱PDCA、日本経済再興の処方箋
「OODA(ウーダ)ループ」という戦略理論をご存じだろうか? 孫子の兵法や宮本武蔵の『五輪書』にも学んだ米空軍のジョン・ボイド大佐が朝鮮戦争のとき、1機の戦闘機で数十機の敵機を撃墜する戦果を挙げ、その戦術を理論化したものだ。米国では、経営大学院でも注目され、現在では多くの企業が経営戦略に採用するなど、民間にも広く普及している。「たとえば、選挙戦でも役立てられていて、トランプ氏が大統領選で勝利したのも、ウーダが奏功したからだといわれています」と、著者で経営コンサルタントの入江仁之さんは明かす。
ウーダは、「Observe(見る)」「Orient(わかる)」「Decide(決める)」「Act(動く)」「Loop(見直す)」という思考プロセスからなる。目指すべきビジョンをまず描き、それを実現するための戦略を、状況を見ながら組み立て、行動する。しかし、1度決めたビジョンや戦略も、環境の変化に応じて見直す。だから、想定外の事態にも対応できる。
「戦況は時々刻々と変化していきます。ボイド大佐は、最前線の部隊が敵の出方に応じて、迅速に意思決定したほうが得策だと考えたのです」と入江さん。
入江さんは、大手外資系コンサルティングファームなどを経て独立。トヨタ自動車、パナソニック、日立製作所などでコンサルティングを行った実績を持つ。以前、米国IT企業であるシスコシステムズの戦略担当部門マネージングディレクターを務めていたとき、「ウーダの有効性に目を見張りました」と振り返る。