問いを立てる力は筋肉のように鍛えられる
実際にはどの問いかけに取り組んだとしてもなんらかの「答え」には到達するかもしれません。また、その企業の存在意義や戦略とも関係するでしょう。しかし(3)のような問いかけからスタートすると、新しいものが生まれる機会が増えるのではないかと考えます。
人間は幼いときほど好奇心旺盛で、きっと皆さんも子どもの頃は親を質問攻めにして困らせた時期があるでしょう。先入観やバイアスがない子どもたちの質問は実にクリエイティブで、そこにたくさんの可能性や想像力を感じさせます。
ところがその後の教育では、より速く正確に「答え」を導くことに重きが置かれているため、従来の常識や正論にとらわれない行動や思考をもとに「問い」をつくることに難しさを感じる人は多いかもしれません。
しかし、少し視点を変えたり工夫をすることで、面白い問いを考えていくことを練習することができます。これは筋肉のようなものなので、意識して鍛えることによって強化できるのです。
日常の「当たり前」を疑う
「変化をもたらす問い」などと言うと、なにやら革新的で大それたものを考え出さないといけないように聞こえるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。多くの場合、それは日常に潜んでいる一見なんの変哲もない疑問や気付きから始まることがあります。最近もそんなストーリーを目の当たりにする機会があったのでご紹介します。
薬ケース、もしくはピルケースというものを見たことがあるでしょうか? 毎日薬を飲まないといけない人にとって、飲み忘れは一大事です。それを防ぐために、多くの患者は毎週自分で、曜日別に蓋の分かれたピルケースに薬を詰めるのです。そのような努力をもってしても、実際には、定常的に薬を飲まないといけないアメリカ人の半分以上は何度も薬を飲み忘れているそうです。
2代目薬剤師だったT・J・パーカーはそんな「当たり前」に疑問を投げかけました。
「どうすればたくさんある薬を毎週手作業でピルケースに詰めないで済むようにできるだろう?」
ヘルスケア業界は巨大な市場規模があるにもかかわらず「当たり前」や「そういうものだから」というものが多く残っている業界です。そこで彼が考えたのは、オンライン薬局とも言えるようなサービス「ピルパック」です(実際ピルパックは実店舗を持ちませんが薬局として認可されています)。