口ベタ、コミュ障も話せるようになる
「自分はどうも話が下手だ」という自覚のある人は多いだろう。「他愛のない雑談が苦手」「人前で発表するとき緊張してしまう」など、人によって特に苦手とするシチュエーションがあるはずだ。そこで「1分」「5分」「10分」と、話す時間の長さに応じた上手な話し方について、経営者、放送作家、精神科医というバラエティに富んだ職業の方々に聞いてみた。
意外なことに、全員に共通していたのが、「決してもともと話し上手ではなかった」ということである。レノバ代表取締役会長の千本倖生氏は、「小学生の頃は消極的で、人前で話すのが大の苦手。学芸会で役を与えられても、当日になって逃げ出すような子だった」と振り返る。ところが日本電信電話公社(現・NTT)勤務時代にフルブライト奨学生としてフロリダ大学に留学したことが転機となった。
「海外では黙っていたら存在しないのと同じ。自己主張しなければ生き残れないのですから、口下手などと言っていられませんでした」(千本氏)
「自分は“コミュ障”でしたね」と言うのは、放送作家の石田章洋氏だ。
「上京して入学した大学では友人ができず、1人で昼食を食べているところをほかの学生に見られたくなくて、トイレでおにぎりを食べたりしていました。今でいう“便所めし”の走りです」
大学からは自然と足が遠のき、毎日下宿に引きこもって落語を聞くうち、落語家になることを決意。大学を中退して六代目三遊亭円楽(当時は三遊亭楽太郎)師匠のもとに弟子入りする。
「なんとかプロの落語家にはなれたものの、スベってばかり。話すのがダメなら書けばいいのではと、数年後に放送作家に転身しました」(石田氏)
しかし台本を書くよりも先に、打ち合わせの段階でディレクターやプロデューサーの興味を引くことができなければ、放送作家としてやっていくことはできないことに気づく。