誰かと一緒にいることで、自分が成長できる。心を豊かにできる。それが家族を持つ意味です。血の繋がりとか、お金とか、そんなものは本当はどうでもいい。家族でいることが心をすり減らすなら、家族の意味があるでしょうか。アカデミー賞にノミネートされた『万引き家族』も、空き巣泥棒と結婚詐欺師の家族を描いた『at Home』という映画も、どちらも血の繋がりのない家族の話でしたけれど、共に暮らすことで新しいお互いの価値を見つけるお話で、とても面白かった。日本という国も、いまの時代も、そういうものを受け入れるようになっているのかもしれませんね。

孤独を楽しむ、自由を楽しむためには、2つの条件があります。それは、経済的自立と、精神的自立です。それは、2人で生活していても同じ。私のところも独立採算制でやっていますし、大きな買い物をするときは、私のほうが不定期で収入があるから頭金を、つれあいは勤め人だから月賦を、とそれぞれの都合に合わせていました。

「孤独」は自由で素晴らしい──。ベストセラー『家族という病』『極上の孤独』の著者・下重暁子が孤独を楽しむ2つの条件を開陳する。

経済の自立は本当に大切です。女性が社会的に自立したとはいえ、まだ男に養ってもらうとか、結婚相手の年収を気にする人が多い。そりゃあ、お金はあったほうがいいですけれど、相手のお金を頼るということは、それだけ束縛も多いと覚悟しないといけません。それは自由がないということですよ。裏腹なところを理解しなければ……。私は自分で稼いだお金は、自分で使い切ると決めています。すでに遺言書も書いています。つれあいと共有しているもののほかは、何の財産も残さず、残りは寄付しようと思っています。

そりゃあ人間、寂しいこともあるかもしれないけど、それは感受性があるから。寂しさと、孤独は違います。自分に責任を持って、自由に生きること。孤独な人生って楽しいものですよ。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)
1959年、早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後日本放送協会(NHK)に入局。アナウンサーとして活躍後、フリーに。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。著書に『家族という病』『極上の孤独』など多数。
(構成=伊藤達也 撮影=工藤睦子)
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