少子化社会対策白書(内閣府)によると、生涯未婚率(50歳までに1度も結婚したことのない人の割合)は、1990年頃から上昇し始め、15年時点では男性23.4%、女性14.1%だったが、40年には男性29.5%、女性18.7%に上昇すると見られている。およそ男性の4人に1人、女性の5人に1人が一生シングルとなるわけだ。

こうした社会の変化は新しいビジネスチャンスをもたらすのだろうか。

「世帯類型の変化が消費市場を変える。今はその大きな転換期」と話すのは、博報堂ソロもんラボ・リーダーで、『超ソロ社会』著者の荒川和久氏だ。「標準世帯といわれた夫婦と子世帯数は、10年の国勢調査で単身世帯数に逆転されています。夫婦と子世帯数の減少に呼応して、スーパーの売り上げは横ばい傾向になりました。一方、80年代以降ずっと、単身世帯数とコンビニの売上額はほぼ比例して右肩上がりに推移しています。主婦が家庭の消費を一手に引き受けていた時代から、『個人化する消費』の波がきていることは明らかです。今後はソロ消費市場が拡大することは間違いないでしょう」。

「ソロ生活者が使うお金なんてたかが知れている」と侮ってはいけない。荒川氏の試算によるとソロ生活者は「1人で一家族分消費する費目も多い」という。特に、ソロ男性は、外食(図1)をはじめ食費と教養娯楽費が高いことが特徴だ。家族より消費支出額が少ないといっても、ソロ生活者の絶対数が増えていくため、消費市場に与えるインパクトは大きいと考えられる。

積極的に1人を楽しむというニーズ

こうした中、1人の孤独な時間を積極的に楽しむ人も増え始めているようだ。「たしかに単身世帯が増加し、孤立する人が増えているのですが、それほど寂しさを感じていない人も少なくないようです。というのも、スマホ1つでいつでも人とつながれるからです。むしろ必要以上に人とつながりすぎることに疲れてしまい、“積極的に1人になって楽しもう”という人が増えています。こうした現象は今後さらに顕在化してくると思います」(石原氏)。

昔から日本人はコミュニティを大切にし、グループ行動を好むと思われがちだ。だが、あなたは1人行動派(1人で行動するのが好き)かグループ行動派(誰かと一緒に行動するのが好き)かを聞いた野村総研のアンケート調査では意外な結果が出ている。20代~60代の過半数が「1人で行動するほうが好き」と答えているのだ(図2)。