実は、そういう名医たちが、常勤先ではない外部の病院やクリニックに非常勤として出向いているケースがある。
「名医といわれる医師には外科医が多いですが、外科は“手術をやってなんぼ”の世界。外来患者を診る仕事は、それほど重要視しません。それでも、名医は本当は外来患者も診たいんです」
と中村氏。特殊疾患ばかり来る大学病院では、名医は手術だけ行っている場合が多い。心ある医師は、一般患者の軽い症状も幅広く診ておきたいし、手術だけではなく、患者を初めから終わりまで診たいという気持ちがあるという。
もちろん、稼ぎも大きな動機のひとつだ。大まかだが、例えば35歳の大学病院の年俸は400万~500万円程度。しかし、外の病院で週1回診れば年に約500万円、当直を組み入れればさらに1000万、1500万と積み上げ方式で跳ね上がるという。
では、名医に診てもらうには、“本籍”の大学病院へ行くほうがいいのか、それとも非常勤先の医院・クリニックに行くほうが得策なのか。
「大学病院から町のクリニックに来る名医は、大学病院よりは比較的時間が取れるので、大学病院を目指すより合理的です。患者さんにとっては名医との距離が近いし、早いし、安心できますから」(川田氏)
結論から言うと、まず名医の非常勤先の病院・クリニックに赴き、診断の結果、手術が必要とあらば、そこから“本籍”の大学病院に移るという流れが望ましいようだ。
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名医が非常勤で外に出る理由の1つは、そこで診た患者に何かあれば、自分の病院に連れて帰れること。患者も安心できる。つまり、自ら外部へ出向いて、自分の病院でも診られるようにするわけだ。
「医師の優秀さは、患者を診た数にある程度比例するでしょう。極端にいえば、心臓手術を年300件行っている名医と1件のみの医師なら、患者が前者にお願いしたいのは当然でしょう」(川田氏)
名医も実績を積むために、町のクリニックに出向く。要は医師側もウェルカムであるわけで、患者側も遠慮する必要はない。ただし、「非常勤先での手術は通常ありえない」(中村氏)ことは押さえておこう。手術目的で行くなら、非常勤先で名医と知り合いになり、そのまま常勤先に連れていってもらえる。診断の結果次第で、常勤先の病院の別の科に回ることもあるが、それでお互いウィン・ウィンなら言うことはない。
「名医にとって非常勤先は、患者さんをゆっくり診られる、触れ合う時間が取れる現場でもあるわけです。患者さんやその家族からは感謝されますし、『自分は患者に生かされている。自分を頼ってきてくれる。こんな喜びはない』と思う医師もいる」(川田氏)