「書き取り暗記」はおすすめできない

さて、できるだけ五感を使えばいいと述べましたが、個人的におすすめできない組み合わせもあります。それは、「手を動かす」暗記法です。

もちろん人によって向き不向きはありますし、「この方法が私には一番効果的なんだ!」という方を止めるつもりはありませんが、どうしても無駄な時間と労力を使ってしまうんじゃないか、と毎回思ってしまうのが「書き取り」です。単語帳をノートにひたすら書経のように写しまくっている人をみると、いろいろと突っ込みたくなってしまいます。

まず、書き写すのには口で唱えるよりも時間がかかります。そして、綺麗にノートに書かなければいけない、という余計な考えが邪魔をして、本来の「暗記」という目的がずれがちになります。

さらに、「ノートに書いて、後から自分で振り返るんだ!」という人がいますが、手書きよりも活字のほうが読みやすく頭の中が整理されやすいのは当然です。全く同じ情報が載っている媒体であれば、単語帳本体を読み返したほうが効率的でしょう。書き込みがしたかったら、単語帳に直接してしまうのが手っ取り早いです。

小さな意識改革の積み重ねが重要

私が手書きでメモを取るのは、どうしても覚えられないものだけ。1日のノルマ、例えば100単語の反復練習を終わらせたら、何度反復しても引っかかってしまった単語をメモ的に小さな紙にまとめて、いつでも見直せるようにしておきます。

夕飯前に一度、通勤中に一度、昼休憩に一度、その紙を唱えていれば、翌日の終わりにはもう定着していることでしょう。そうすればその紙の役目は終わり、ゴミ箱行きです。

この「唱える暗記法」は英単語を例に挙げて紹介しましたが、英検の読解文、TOEFLの会話文、古文漢文、数学の公式など、どこにでも応用がききます。

何を記憶するにも、キーワードは「五感」と「時間効率」。

五感は前述の通りですが、ノートに単語を写す時間ですらもったいないという感覚や、昼休憩の時間のうち5分だけ利用しようという感覚、時間効率を上げるほんの小さな意識改革の積み重ねが、着実に自分をステップアップさせてくれるのだと私は信じています。

廣津留すみれ(ひろつる・すみれ)
バイオリニスト、Smilee Entertainment社 CEO
1993年、大分市生まれ。小中高まで地元の公立に通い、2012年ハーバード大学に現役合格、2016年に首席で卒業。ジュリアード音楽院の修士課程に進学。2018年に首席(William Schuman Prize)で卒業後、ニューヨークで起業し、多方面に事業を展開中。ニューヨーク在住。
(写真=iStock.com)
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