とっておきの仕返し“歯科医院前でデモ”

以上、歯科医師に関するトラブルの対処法について答えてもらったが、医療ミスに関する相談等を受けてきた野澤弁護士曰く「多くは泣き寝入りするしかないのが現状」だという。だが、患者側も黙ってばかりではいられない。何か効果的な“仕返し”ができる方法はないのだろうか。

「本音を言えば、弁護士は歯科医師とのトラブル案件をあまり手掛けようとは思っていません。立証が難しく、手間取る割に弁護士報酬は全部で30万円程度ということもザラだからです。医師との比較で言えば、例えば医療ミスで親が亡くなったので病院を訴えた場合、賠償額が3000万円程度になることはよくありますが、歯科医師を訴えてもせいぜい数百万円であることが多いのです」

では、対策はないのか?

「資格を前提とした医療機関が最も嫌がるのは、診療費の請求ミスの指摘。当局が動けば、営業自体が危ぶまれるので何としてでも避けたいところです。そのため、過去の領収書やカルテを洗いざらい調べて、不正な診療費が請求されていないかチェックするのは1つの手です。特に経営難の歯科医院の場合、悪質な水増し請求で当局と揉めていることがよくありますので、そういった事情を早く把握し交渉材料とするのです」

もし、請求ミスが見つかったら、事実上の賠償目的の治療費返還等の交渉を開始する。だが、こうした対処法で簡単に歯科医師側が対応するとは限らず、治療費自体は少額の場合も多い。

こうした方法でうまくいかない場合に備え、野澤弁護士はとっておきの秘策を教えてくれた。

「歯科医院の近くでデモ活動をするのも法的に認められた権利として場合によってはアリです。数十分程度なら表現の自由の範囲で許されますし、効果は思ったより大きい。競争が厳しい業界で最も怖いのは風評被害です。明らかな医療ミスの場合、施術前と施術後の歯の写真を印刷したプラカードを掲げ、ビフォー・アフターがわかる抗議活動をするのも有効な策の1つでしょう」

デモ活動をする場合のコツがある。

「主張内容をはっきりさせる、つまり『○○歯科医師は謝罪しろ!』といった抽象的な内容だけでなく、『X月X日の●●治療について』などと具体的に示すのです。名誉毀損にならないよう配慮すべきですが、言いがかりでないことを対外的にも示すことになります」

歯に衣着せぬ行動が結果にコミットすることもある。泣き寝入りとは今日でおさらばだ。

野澤 隆(のざわ・たかし)
弁護士
1975年、東京都大田区生まれ。東京都立日比谷高等学校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。弁護士秘書などを経て、2003年、司法試験第2次試験合格。08年、城南中央法律事務所を開設。
(撮影=小原孝博 写真=PIXTA)
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