「弁護士に頼みます」と、本気度を伝える
このような状況もあり、歯科医師にまつわるトラブルは日々絶えない。今回は読者などから寄せられた歯科医師とのトラブルについて、野澤弁護士に法的観点から対処法を答えてもらった。
【相談1】先日、結婚し都内へ引っ越しました。慣れない土地で初めて入った歯科医院で、私が妊婦という理由で治療を拒否され、仕方なく歯科衛生士に診てもらいました。これは問題では?(31歳・女性・東京)
【回答】胎児への影響を考慮し、産婦人科との連携がうまく取れない場合には本格的な治療まではしないとの理屈も一理ありますが、法律的には「応召義務違反」の疑いがあります。医師や歯科医師は患者から治療を求められた場合、治療する義務が原則あるからです。なお、弁護士が、依頼を受けるかどうかは、最終的には努力義務です。極論を言えば、割に合う案件かどうかを判断したうえで受任することができるのです。
【相談2】2018年夏、東南アジアへの海外旅行中、突然歯に激痛が走りました。急いで現地の見知らぬ歯科医院に行ったところ、いきなり歯を抜かれ、痛い思いをしたので訴えたいのですが……。(44歳・男性・神奈川)
【回答】海外での治療は、高いリスクがあります。現地の法律が基本的に適用されるため、日本の法律で訴えることができません。対策としては、(情報提供等を含め)歯科治療まで対応している海外旅行保険に入ることが考えられます。一般のクレジットカードに付いている保険では歯科治療をカバーしていないことが多く、注意が必要です。
【相談3】歯に金属を被せる治療をしてもらったが、半年あまりで膿が出た。何とかして訴えたいが、割に合うのか。(50歳・男性・大阪)
【回答】医療ミスの可能性が高いです。治療経緯の資料等を取り寄せ、粘り強く説明を求めてください。対応がひどい場合には、本格的な訴訟の開始前に裁判所での民事調停や各種団体のADR(裁判外紛争解決手続き)といった選択肢をまずは考えることになります。
【相談4】半年前、親知らずを抜くために手術をしましたが、術後の痛みが治まりません。歯医者に電話しても「そのうち治まります」の一点張り。しかし、経過検診に行った際、私の口の中を見て、その歯医者は「あー、はいはい」と言いながら何やら診療を開始しました。なんと、歯茎から骨が露出していたことが判明しました。(39歳・男性・兵庫)
【回答】術後ケアの内容にもよりますが、医療機関側のミスの可能性が相当程度ありますので、数万から数十万円の損害賠償請求が可能でしょう。入通院慰謝料および休業損害等については、書籍やネットで相場を知ることができますので、弁護士などから簡単なアドバイスを受けつつ、そうした情報を元に請求するのをおすすめします。ただ、最初は医療機関側も抵抗してくるでしょうから、「揉めた場合には弁護士に頼みます」とはっきり伝え、こちらが本気であることを示す必要があります。