入院・外来ともに患者数は右肩下がり

山手線内の東京都心部には、全国でもっとも多くの医療機関があり、生き残りをかけてしのぎを削っている。患者を獲得するため、それぞれが専門性を磨いている。この傾向は東京で顕著だ。全国の国立大学病院の中で東大病院が最も苦しい境遇にあるのも、ある意味で仕方がないのかもしれない。東京の次に医療機関が多い大阪でさえ、がん研有明病院や榊原記念病院のような民間の専門医療機関はない。

東大病院の凋落ぶりは数字の上からも明らかだ。図表1は患者数の推移だ。入院患者数は2008年度の39万6436人に対し2017年は35万8923人、外来患者数は2008年の80万931人に対し2017年は69万8780人と、右肩下がりが顕著だ。

東大病院の患者数の推移(画像=「東京大学医学部附属病院の概要」P8より)

『選択』2月号で紹介された東大病院の内部資料によれば、昨年11月の病床稼働率は80.8%で、前年同月比でマイナス2.7%だった。

2017年度上半期の東大病院の常勤医師数は1,026人で、医師一人あたりの売り上げは3,994万円だった。

医師一人あたりの売り上げはがん研有明病院で約1億円、榊原記念病院で約1.9億円だ。東大病院の生産性がいかに低いかご理解いただけるだろう。

研究の生産性は京大の「7割程度」

もちろん、東大病院は市中病院と違い、学生教育や研究も担う。生産性が下がるのはやむを得ない側面もあるが、42ある国立大学附属病院の中で医師一人あたりの売り上げが最下位であることも追記しておきたい。

また、研究の生産性も決して高いわけではない。図表2は医学部の臨床研究の生産性を比較したものだ。

各大学の臨床研究の生産性比較(画像=上昌広)

少し古くなるが、2009年1月から2012年1月までの間に、大学病院に所属する医師100人当たりが発表した臨床論文の数を示している。この調査は、当時東大医学部5年生であった伊藤祐樹君が行った。米国医学図書館のデータベース(PUBMED)を用いて、“Core Clinical Journal”に分類される論文の発表数を調べた。

東大は全体で5位。トップの京大の7割程度の生産性だ。診療と研究のいずれの点においても東大病院は極めて効率の悪い組織となっている。