突発的な大リスクを孕む外食業界

牛丼業界に限らず、外食業界全体の課題として、ひとつの業態に力を入れ過ぎていると、突然の業態リスクに直面することで存亡の危機に陥る現象が目立ちます。

牛丼業界でいえば2004年に起きたアメリカ産牛肉のBSE問題があります。この年の2月11日、吉野家全店で牛丼の販売が終了し、それは2006年9月まで2年半続きました。この事件以降、牛丼業界に限らず、外食業界では多業態ポートフォリオを持つことで経営リスクを分散させることが経営戦略上のセオリーとなりました。

マクドナルドの異物混入事件では、外食産業最大手の日本マクドナルドの経営の屋台骨がゆらぐほどの打撃をうけました。居酒屋のワタミはブラック企業が社会問題になる中で糾弾され、和民やワタミを冠する店舗は売上を大きく減らしました。牛丼のすき家でも深夜のワンオペが破たんすることで、ローコスト経営戦略の見直しへと舵をとらざるを得ない状況へと追い込まれてしまいます。

これ以外にも、アルバイト店員によるツイッター炎上や、異物混入、あってはならないことですが産地偽装や食中毒など、外食経営には常に大きなリスクがともなっているのです。

多角化経営の困難「ステーキと寿司はジリ貧」

それを軽減するための対策がポートフォリオ経営で、違う業態の店舗フォーマットをいくつも持つことで、ひとつがダメになってきたら他が支える。ないしは他の業態へと衣替えをすすめる。そして本社コストや、原材料仕入れ、物流など出来る限りのコストをさまざまな事業で分担するようにする。

これが理想なのですが、実は現実には簡単ではない。そして吉野家ホールディングスの場合は、このポートフォリオ経営の方がより経営の足をひっぱっている様子なのです。

そもそも外食産業には「死の谷」という現象があって、業界最大規模のチェーンと、小さいけれども特色のあるチェーンは生き残りやすい一方で、中途半端な規模のチェーン店は赤字に転落してしまうという構造があります。

寿司の場合、スシロー、くら寿司、はま寿司のように業界トップを争う位置にいるとまだ利益もついてくるのですが、そこから順位を下げるととたんに業績が悪くなる現象があります。そこに吉野家グループの京樽が位置します。

同様にステーキでいえば今一番勢いがいいのがいきなりステーキやペッパーランチを運営するペッパーフードサービス。それと比較してステーキのどんはじり貧の位置にあります。