自民党の「静観」は民主主義を無視するのと同じ

辺野古移設を認める自民党沖縄県連は、自主投票を前面に出して静観する構えを見せている。自民党得意の「組織票固めをしない」というのだから、実際にはあきらめに等しい対応だといえる。

過去に行われた米軍基地絡みの住民投票で基地反対が多数を占めた経緯や、沖縄県知事が翁長雄志氏(昨年8月死去)、玉城デニー氏と移設中止を掲げて当選したことから、今回の県民投票でも辺野古移設に伴う埋め立て反対が多数を占める公算が大きく、組織を積極的に動かすことで辺野古移設問題に悪影響を及ぼすことを警戒しているのだろう。

報道によると、自民党沖縄県連からは「自民が賛成票を求めれば求めるほど、反発を買って投票率は上がり、移設反対の民意を高めるばかりだ」とか、「どうせまた反対が多数を占める。自民に勝ち目はない」との声が出ているという。

しかしそんな消極的な姿勢でいいのか。直接投票である県民投票は、沖縄の民意がはっきりと示される。

沖縄県民は米軍基地をどう考えているのか。米国に頼ってきた安全保障をこの先、どうしたいのか。米軍基地で潤ってきた恩恵をどう評価するのか。米軍基地に配備された軍用機の事故や、度々起きる米兵による暴行事件とどう向き合うのか。

こうしたもろもろの事案に対する沖縄県民の考えを示す投票である。民主主義の原点にもつながる。自民党よ、本物の政党であるならいまこそ、積極的に打って出るべきではないか。県民投票を静観するのは、民主主義を無視するのと同じである。

正反対の主張を繰り広げる朝日と読売の社説

この連載では各紙の社説を読み比べている。よく社説は「おもしろくない」と言われるが、「沖縄県民投票」をめぐる社説は読み比べると、とてもおもしろい。どのように書いても、その新聞社のスタンスが明らかになり、本音を知ることができるからだ。

2月15日付では多くの新聞が「沖縄県民投票」を社説のテーマに選んでいる。ここでは正反対の主張を繰り広げている朝日新聞と読売新聞の社説を読み比べていこう。

「結果はもちろん、これまでの経緯、そして運動期間中に交わされる議論や関係者の動きにも目を凝らし、この国のありようを考える機会としたい」

15日付の朝日新聞の社説は「国のあり方考える機会に」との見出しを付けて冒頭部分でこう主張する。辺野古移設に反対する朝日社説らしいが、このあとの書きぶりには首をひねってしまう。