TOPIC 3【人手不足】
AI導入は加速していくが、当面、ピンチは変わらない
この30年間のグローバル競争とは、何だったのか?
18年12月10日に幕を閉じた臨時国会で、外国人労働者の受け入れ拡大を目指す出入国管理法改正案が脚光を浴び、わが国の労働力不足を強く印象づけました。実は、これは日本が人材の獲得競争で、後れをとってしまったことを示しています。
18年は平成30年ですが、この30年の間に、日本の人口はほとんど変化していません。平成の途中まで人口は少しずつ増え、その後、減り始めて、結局はほとんど同じです。問題はこの30年の間に、世界で何が起こったかということです。米国の人口は約30%も増え、3億人を超えました。すっかり成熟したと思われている英国でさえ、15%増えている。
つまり、この30年間のグローバル競争というのは、要するに主要国にとっては人材の取り込み競争だったのです。日本だけがそれに背を向けてきた結果、今とんでもない人手不足が起こってきて、もうにっちもさっちもいかなくなり、ついこの間まで移民反対とか言っていた人までが、急に、「何でもいいから外国人を入れてくれ」と言い出しました。外国人を受け入れざるをえない状況になったということでしょう。
○○産業という分類に、意味がなくなる時代へ
しかし、実は海外の専門家から見ると少し奇異な感じもあります。今まで何もしなかったのに、急ごしらえの制度が、拙速なのではないかと。そんな指摘が出ているのも事実でしょう。
外国人労働者の受け入れ制度については、これから政省令などで実務面を決めていくわけですが、実は相当手続きが面倒になる可能性がある。そんなに急激に手続きが簡素化されるようなものではないと思いますので、間違いなく、当面の人手不足は相変わらず続くでしょう。
一方、AI、ロボットに労働力を置き換えるという流れは強い勢いでこれからも進む。恐らく18年より19年のほうが、そうした動きがもっと明確に出てくると思います。AIやロボットに置き換えられる分野は「○○産業」というのではなく、あらゆるところに出てくると思います。
よく言われることに、「トヨタのライバルはどこだ、グーグルだ」「パナソニックのライバルはどこだ、グーグルだ」というものがあります。これは、○○産業という分類がほとんど意味を持たないということを意味しているわけで、すべての産業でデジタル化が進み、ビッグデータ化され、AIが判断するという動きが出てきて、思わぬ異業種間の競争が起こる可能性があります。
だからある分野では職を失う人が出てくる半面、新しいビジネスが新たな雇用を生むし、伝統的な職業でも人手不足が続くと予想されるものもあります。自動車ドライバーがそれです。AIを使い自動走行の開発が進められていますが、この1、2年では完全な自動走行は無理でしょう。その間大幅な人手不足が続くわけで、全体としての労働力不足というのは、短期的にはそんなに解消されないでしょう。