TOPIC 2【金利上昇】
株・不動産保有者は要注意! 大いなる安定時代の終焉

「黒田バズーカ砲」は、なぜ間違っていないか

メディアでは金利が上昇し始めているという記事が増え、19年は金利上昇の年になるとの見方が強まっています。しかし私は金利が急上昇するとは思っていません。グレートモデレーションと呼ばれる大いなる安定が終わりを迎えるため、金利上昇圧力が弱まるからです。むしろそれにより株、債券、不動産の価格のボラティリティ(不確実性)が急速に高まることに留意すべきだと思っています。では、なぜ足元では金利が上昇しているのか。

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日本銀行は13年4月に「量的・質的金融緩和」政策を導入しました。前年比2%の消費者物価上昇率を目標とし、これを2年で達成するとして、日銀が大量の国債を購入することなどによって巨額のマネーを市場に供給しました。

08年のリーマンショックの後、米欧の中央銀行は通貨供給量を増やしたのに対し、日銀だけが増やしませんでした。すると相対的に通貨量の少ない円が高くなるわけです。民主党政権時代には1ドル80円近辺もの円高になった結果、日本の企業は大量に海外へ生産拠点を移しました。

国内での投資は減り、日本のデフレを克服できませんでした。だから、デフレを克服するためにも、通貨量を増やす「黒田バズーカ砲」という政策は間違っていない、ということです。

日銀の動きに対し、市場が過敏に受け止めている

ところが、こういう物価目標政策は、本来は短期決戦のはずでした。政府も足並みを合わせて、規制緩和を行い投資機会をつくって、一気に経済の流れを変えるという戦略だったのですが、日銀は変わったけれども、政府の規制緩和が思うほどできなかった。

結局、物価はマイナスではなくなったが、目標の2%達成にはまだ遠いという、日銀にとっては非常につらい状況が続いています。本来短期決戦の政策が長期化したことによって、運用利回りを調達利回りが上回るという逆ザヤが常態化し、銀行部門、とりわけ地銀の経営に非常に強いしわ寄せが起こっています。

そのことに日銀も配慮せざるをえなくなって、金融緩和は継続するが、その緩和の程度を抑え始めました。例えば国債を年間80兆円買うと表明したが、実際はそれほど買っていないというように微調整をしているわけです。それを市場が過敏に受け止めているという面はあるでしょう。

もう1つの要因は、米国の金利が上昇していることです。米国では、政府が巨額の減税の結果、財政赤字が拡大をする一方で、FRB(連邦準備制度理事会)は、超金融緩和からの出口を求めて金利を上げている状況です。つまり、これは財政赤字という金利上昇要因と中央銀行による金融引き締めの組み合わせです。それが世界の金利に影響を与えています。

ただ、19年、さらにもっと金利が上昇していくとは見ていません。というのは、このところ世界経済が少しずつ悪くなり始めているので、そういう状況の下で金利を引き上げるということはありえないからです。