リーマンショック時の世界は、これとよく似ている。世界的にバブルだった。日本国内自体はバブルではなかったが、日本も輸出需要増加という恩恵は受けていた。しかも、アメリカ発の投機バブルのせいで原油をはじめとする資源価格が07年から急騰する中で、「先高を見越して今のうちに資源を手当てして、まだ安いうちに自社の生産を増やしたい」という、ついついの「仮需」があちこちの産業で発生するような状況にあったようである。それが、07年第4四半期をピークとするグラフのコブに表れている。
そこへリーマンショックがきた。それは需要の大幅減少だけでなく、資源価格のマッターホルン型急落を伴うものだった。だから、過剰在庫の調整のための生産手控えに加えて、資源価格の先行き低下を見越しての生産手控えが重なった。二重の生産手控えが過去にないようなスピードでの生産調整となったのが、08年11月から09年1月までの時期だったようである。
しかし、その生産縮小がいつまでも続くと思う必要はない。この図のリーマンショック時グラフは、09年第1四半期は大きく戻すはずである。もちろんそれでも、まだマイナス水準での戻しにすぎないだろう。しかし、年率2ケタマイナス成長というような08年第4四半期のようなことにはならないだろう。
しかし怖いのは、異常な縮小を見てしまった経済の現場が、心理的に萎縮することである。その恐怖心がさらなる下落を招きかねない。それだけは避けたい。その鍵になるのは、やはり消費者だろう。ゴールデンウイークの海外旅行予約の急増は、消費者の心理的萎縮が極端ではなく、原油価格の低下に正常に反応している証拠とも見える。マッターホルン型の資源価格の乱高下に冷静に反応することの重要性は、きわめて大きい。