「お前さんの雑誌や編集のやり方は嫌いだ」

買って読んだことはないが、他人にいわれて読んでみると、的外れな伝聞記事で、よくこんなものを載せるものだと、妙に感心したことがあった。私と友人の猪坂豊一が主宰していた「マスコミ情報研究会」もよく取り上げられた。政治家と癒着している、不透明なカネが流れているのではないかという憶測記事だった。

だが、困ったのは、その根も葉もない記事を信用して、私を詰問してくる講談社の上の人間がいたことだった。どんな間違ったことでも、いったん活字になると、それを事実ではないと証明することはなかなか難しい。

その経験から、活字にする以上、その内容に責任をもつべきだという、至極当然なことを「噂真」から学ばせてもらった。

「週刊現代」編集長時代、ゴールデン街のバーで偶然、岡留と会ったことがある。彼から、たまには飲みましょうよと声をかけられたが、「お前さんの雑誌や編集のやり方は嫌いだ。オレが編集長でいる間は付き合わない」と答えた。

怒るかと思ったら、何もいわず離れていった。

「ろくでもない雑誌」と書いても「そのまま載せる」という

「噂真」の創刊十何周年だか忘れたが、私に「噂真」について、何でもいいから書いてくれと、電話で頼んできたことがあった。

「『噂真』はろくでもない雑誌で嫌いだ」と書いても載せるかというと、「かまわない、そのまま載せる」というので送ったら、そのまま掲載されていた。

岡留と付き合うようになったのは編集長を降りてからである。

彼の訃報を聞いて、昔、彼からもらった本を何冊か見ていたら、「噂の真相休刊記念別冊 追悼! 噂の真相」の中の「編集長日誌1999~2004」に、私のことが何度か出てくる。

たとえば、「某月某日 元木昌彦氏が雑誌『エルネオス』で連載中の『メディアを考える旅』のゲストとして登場してほしいというわけだ。(中略)元木氏に関しては『週刊現代』や『フライデー』の編集長時代に何回か批判記事を書いていただけに意外な感じもあったが、当方に異存はなく、即OKする」

すっかり忘れていた。「エルネオス」というのは私の友人、市村直幸が編集長をしている月刊ビジネス情報誌で、たしか1998年ぐらいからメディアに携わる人間をゲストに招いて対談をしている。

以来、途切れることなく続いていて、現在まで253回という長寿連載になっている。

探してみたら、2000年3月号に岡留との対談が載っている。24回だから、2年目の終わりである。少し長くて恐縮だが、私が書いたリードの部分を引用してみたい。