「難しすぎず簡単すぎない」を狙う

「同じ商品を3年売ると、商品の鮮度が落ちてくるんですよ。だからそのタイミングで、アニメ化に合わせて商品をリニューアルしようということになりました。そこで設計したのが現行のデラックスシリーズで、アニメそのままのディテールに寄せる作りにしています。旧版は変形ギミックのためにプロポーションが犠牲になっていたので、もっと違和感のないカッチリした作りのものにしよう、と」

このときにこだわったのが、変形の難易度だ。試作品を3~6歳の未就学児に遊ばせ、どのくらい遊べるか、一度説明したら変形させられるかなど、細かくデータを取った。

「設計は全て、実際に子供に遊んでもらって決めています。アニメは大人も楽しめるように作っていますが、おもちゃはあくまで子供が遊べるのが前提です。子供にとって初めての変形玩具になる可能性があるので、お父さんお母さんが変形させることができて、なおかつ子供でも慣れれば一人で変形させられるラインが理想。そこでコミュニケーションも生まれるし、『難しすぎず簡単すぎない』という難易度は狙っていますね」

「DXS08 ブラックシンカリオン」ドラグーンモード(画像提供=タカラトミー)

子供が遊びやすいように関節を工夫

「シンカリオン」のおもちゃを設計する上でネックになるのが、新幹線形態での車体を絶対にプラレールのレール幅以上のサイズにできないという点だ。特に腰から脚の付け根にかけての部分は、車両先端の一番細くなっている部分に位置するため、スペースの都合で強い構造の関節を入れることができなかった。また、子供は可動部分がかっちりとした構造でないと変形させられないため、必要な可動箇所には動かす範囲を決めるロックが入っている。

「最初の試作品では腰のロールや股関節の可動もあったんですが、そのあたりを作り込むと変形が難しくなりすぎ、遊びづらくなってしまうので削っています。最近のお子さんは、一人あたりが買ってもらえるおもちゃの数が多いので、ちょっと難易度が高くてうまく遊べないと、すぐに飽きてしまう傾向がある。そこは極力気を使いました」