売れ行きに地域差が少ない「新幹線」の強さ

デザインの決定前から、タカラトミーでは「シンカリオン」はプラレールで展開することを考えていた。その理由は、遊びのインフラとしてレールが多くの家庭に行き渡っていた点、そしてプラレールと新幹線という認知度の高いブランドをそのまま活かせる点が決め手だった。

「そもそもプラレールの車両は、うちの商品としては珍しく、売れ筋に地域差が出るものなんです。ですが新幹線は全国的に売れる、非常に強いアイテムでした」

プラレールは鉄道を題材にしたおもちゃだ。それゆえ、基本的にユーザーの子供たちは自分の住んでいるエリアを走っている車両を購入する。例えば山手線のプラレールであれば、東京都内の売れ行きが圧倒的に強くなるのだ。タカラトミーとしても極力全国の広い範囲の車両を販売しようとしているが、どうしても沿線の人口が少ないエリアの車両は出しづらい。そのため鉄道会社とプロモーション連動としてグッズ販売したり、キャラクターでラッピングされた車両など地域差がなく売れる題材を選んだりと、売れ行きのバランスをとることには腐心しているという。

「DXS01 シンカリオン E5はやぶさ」(画像提供=タカラトミー)

アニメ放送前の3年間も売れていた

「その点、新幹線は沿線に住んでいる人の数がケタ違いです。例えば東海道・山陽新幹線であれば、東京から博多まで沿線全体をターゲットにできる。ただ『シンカリオン』の関連商品でも、売れ行きの地域差はあります。普通のアニメコンテンツであれば、アニメを放送しているエリアだったら満遍なく売れるのですが、九州でしか走っていない新800系新幹線がモデルのシンカリオンは、他シンカリオンの比率と比べるとやっぱり九州で売れる比率が高いです」

実は「シンカリオン」のおもちゃは、アニメ放送前後で大きくリニューアルされている。放送以前の2015年に発売された旧版のおもちゃでは各部にバネが仕込まれており、半ば自動で変形するギミックが売りだった。当時はまだ1分半ほどのプロモーション映像しか動画が存在していなかったので、おもちゃのギミックの面白さでもコンテンツを盛り上げていきたいという事情があったそうだ。旧版は、発売から3年かけて複数ラインナップが揃う売れ行きになっていた。それをなぜわざわざリニューアルしたのか。