あの加賀屋はロボットで配膳を自動化
働き方改革においては、大手広告代理店の新入社員の自殺を契機として、(サービス)残業の削減や有給休暇の取得、障がい者雇用など、“ブラック企業”のレッテルを貼られないための取り組み、「働き方改革1.0」が一気に進んだ。
そして現在、働きがいのある会社、社員が成長する会社、すなわち、“ホワイト企業”を目指す取り組みとしての「働き方改革2.0」に移行しつつある。子育てをしながら、親の介護をしながらなど、時間や場所に制約されない働き方や、副業を含めた多様な働き方を許容する。そこでは、テレワークやジョブシェアリング、クラウドソーシングといったデジタル技術が大いに貢献できるだろう。
また、日本人労働者の減少を補うためには、AI・ロボット、外国人労働者、シニア、障がい者などの活用が欠かせない。しかし、そこで重要なのは、真のダイバーシティを実現することである。たとえば、日本一のおもてなしの宿として有名な加賀屋(石川県)では、客室ごと、お客様ごとにカスタマイズされた料理の配膳は、配膳システム及びロボットによる徹底した自動化が行われている。そのおかげで、客室係はお客様へのおもてなしに集中・注力することができる。
愛知と岐阜にauショップを24店舗運営する光通信システム(愛知県一宮市)では、全従業員の約2割を占める外国人50数名がショップスタッフとして大活躍している。国籍は中国、韓国、ブラジル、フィリピン、ネパール、モンゴルなど。母国の家族と離れて日本という大好きな国で働くことを選択したスタッフたちは、働くということに対してとてもハングリーであり、日本人スタッフ以上に、一生懸命、おもてなしの心を持って接客し、お客様から支持されている。実際auショップで働く外国人スタッフたちに話を聞いたが、日本で働けることへの喜び、お客様にありがとうと言ってもらえる仕事ができることへの喜びで、目がきらきらと輝いていた。そんな外国人スタッフに刺激を受けた日本人スタッフたちも、負けじと、生き生きと働いている。
日本理化学工業(神奈川県川崎市)は、学校などで使われるチョークでは日本でトップシェアを誇る企業だが、全社員の7割以上が知的障がい者、しかもその半数はIQ50以下の重度の障がい者である。同社の工場のラインは、作業工程にヒトを合わせるのではなく、一人ひとりの障がい者の能力に作業工程を合わせている。
健常者からすればとても単調な作業を、一日中、真剣に取り組んでいる。彼ら・彼女らは、働くことを通じて、人に必要とされること、「ありがとう」と言ってもらえることが生きがいとなっているのだ。この光景を目の当たりにして、筆者は涙を抑えることができなかった。
これらの事例では、ロボット、外国人、障がい者は、働く上での重要なパートナーであるだけでなく、働くことの楽しさ、大切さを教えてくれる、かけがえなのない存在、相互尊敬の対象である。そのような真のダイバーシティを通じて、「人材」は「人財」となるのだ。