人を褒めるということは人を育てるうえで大事だという。「その言葉に見合うようになろう」という気持ちになり、努力をする。褒めてくれた人を裏切りたくないという気持ちは、決してなくならないものなのだろう。

名経営者の小倉氏や売れっ子作家の渡辺氏の域には達しないまでも、ママや店の女の子をその気にさせる「褒め上手」になるコツはあるのだろうか。

「“けなし褒め”も1つのテクニックです」と話すのは、大企業の社長・役員から政治・芸能関係まで多数の紳士が通うクラブ「ル・ジャルダン」の望月明美ママ。

「あるお客さまから、じーっと顔を見られたあと、『いやあ、やっぱりおまえ、不幸になる顔してるなあ』と言われたことがあります。いくらお客さまとはいえ、そこまで言うかと少しムッとしていると、続いて『やっぱりオレが、ずっと見守っていくしかないよなあ』とおっしゃったのです。要は、“ママはほっとけない人だ”という褒め言葉だったのでしょう。先にけなされているだけに、あとの言葉が一段と効いてくるのです」

前後の言葉で落差をつくりながら褒める“けなし褒め”は、会社でも使えるのではないかと明美ママはアドバイスする。

例えば、上司が「おい、この企画はいったい何だ?」と質問して、部下が「ダメですか」と問い返したときに、「ダメに決まっているだろう。こんなスゴい案を出されたら、他の部署に引き抜かれちゃうよ。とにかくすぐに実行に移してみてくれ」と言えば、部下は「ありがとうございます、頑張ります!」となる。

結果より過程で心をわし掴み

ただし、いくら上手に褒めたからといって、やはり心が籠もっていなければ、NGだという。

「褒めることとおだてることは全く違うこと。おだてるのは最悪です。ホステスも、ことあるごとにお客さまを褒めるようにしますが、そのときに、ただ『カッコいいですね』『素敵ですね』と繰り返すだけではお客さまが喜ぶわけがありません。相手が褒められたいと思っているツボを探し出して、褒めることが重要です。私の場合は『仕事できるね』『稼いでるね』と言われるよりも、『天然だね』『ボケてるところがかわいいね』と言われるほうが、妙に嬉しくなりますね」(明美ママ)

亜紀ママも明美ママも口を揃えて大切だと指摘するのが、相手に対して関心を持ち、よく観察するということだ。

人の心を掴む「褒め上手な男」の特徴
亜紀ママ:成長の過程を褒める
「結果だけではなく、過程を褒める。『見守られていたんだ、努力を認められているんだ』と、褒められた側はキュンとします」
明美ママ:プラスアルファがある
「褒めるだけではなく、今後の課題などを併せて伝えてくださる。お世辞ではないと実感でき、さらに頑張ろうと思えます」
とうかママ:第三者を使って褒める
「面と向かって直接ではなく、第三者に紹介する形をとりながら褒める。照れずに褒めることができ、周囲の称賛も加わり効果も倍増です」