“大企業関係者”ほど大学教育の意味を否定する

4段階尺度の選択肢を提示したところ、もっとも回答が集中したのは「やや考えている」であり、その割合は5割強。そして、「おおいに考えている」は2割弱、「考えていない(あまり+まったく)」は3割。こうした分布を確かめたうえで、この回答を左右する要因を探ったところ、下の図表に示すような結果が得られた。2つのポイントを強調しておきたい。

※この表では「(有能な人材になることに結びつくと)やや考えている」を基準に、どういう人が「おおいに考えている」もしくは「考えていない」と答えるようになるかを示している。例えば「採用担当者自身の経験」の項目では、専門の学習に意欲的だったかどうかを4段階尺度で回答してもらっているが、その意欲が「1」増すと「おおいに考えている」グループに2.5倍ほどなりやすく、逆に「考えていない」グループにはなりにくくなる(0.6倍程度になる)ことがわかる。

第1に、大きな規模の企業の関係者ほど、大学における専門の学習・研究は役に立たないとみている傾向が強い。具体的には、従業員が1万人を超えるような規模の企業関係者は、そうでない企業の者に比べて、2倍ほど「有能な人材になることに結びつくとは考えない」という結果が得られている。

大企業関係者ほど「発信力が強い」

大企業での業務は、どうしても調整ごとが多くなり、縦割り主義・分業主義が浸透しているため仕事の幅も限られる。他方で「勝ちパターン」として引き継がれているビジネスモデルがあり、それへの追随がただ強く求められるということもあり得よう。

大企業関係者ほど「大学における専門の学習・研究は役に立たない」と判断するようになるのは必然のことともいえそうだが、問題はその先である。つまり、一般的に考えて、大企業関係者ほど発信力が強く、その声が注目されやすい。大学教育の意味を疑問視する声があるとすれば、その背景の一端にこのような事情があることを、私たちは頭に入れておくべきであるように思われる。