年末年始は駅伝のハイシーズンだ。だが、運動習慣のない人が選手の走りに刺激を受けて、いきなり走りだすのは危険だ。早稲田大学の鳥居俊准教授は「普段走らない人が急に走りだすと、足のケガを起こしやすい。さらに恐ろしいのは「心臓突然死」だ。ランニングはスポーツのなかでも突然死が多い」と警鐘を鳴らす――。
2018年1月2日、第94回箱根駅伝で一斉にスタートする選手たち(写真=時事通信フォト)

「その気になって」リスクを忘れる

出雲、全日本、箱根と10月から正月にかけて学生の3大駅伝が行われます。毎年クリスマス前後には京都で全国高校駅伝、元旦には実業団男子のニューイヤー駅伝、成人の日の頃には都道府県対抗駅伝(男・女)が行われており、年末年始は駅伝の放映が多数あります。

多くの市民ランナーはこれらの放送を毎年楽しみに視聴しているのか、放送時間帯の前後に走っているランナーが多くみられます。高校生、大学生など若い選手たちの頑張りを目にすると、「自分も頑張ろう!」という気持ちになって走りたくなるのでしょうか。

ランニングは手軽に行える有酸素運動としてお勧めの運動ではありますが、急に、しかも網膜に焼きついた若い選手の勢いで走りだせば当然ながらアクシデントが発生します。理詰めで考えれば当然予想されることですが、「その気になって」しまうとリスクは頭から消えてしまうようです。

ランニングは小さなジャンプの繰り返し

有酸素運動とはいえ、長距離走でも筋損傷、いわゆる肉離れは発生します。ランニングは一歩一歩の着地、衝撃吸収、推進の繰り返しですが、着地の瞬間や推進の際には筋肉に強い力が発生します。そのため、競技選手でも大腿部、ふくらはぎに肉離れが発生することがあります。

ランニングとウォーキングの違いを考えてみてください。「レースウォーキング」と英語で表される競歩では、両側の足が同時に地面から離れてしまうとロス・オブ・コンタクトと言って反則になってしまいます。つまり、ウォーキングでは必ずどちらかの足が地面に着いていて、逆にランニングでは両足とも地面に着いていない、宙に浮いた時間があるわけです。従って、ランニングは小さなジャンプの繰り返しである、という表現すらあるわけです。