魅力的なコンテンツ作りと情報発信がカギになる

また、同じ施設でいろいろなワークショップを体験できるのが誠品生活の魅力でもあるが、反面、このような体験教室は利用者が一巡してしまうと、飽きられてしまうのが常である。そうならないためにも、魅力的なコンテンツ作りや情報発信を行っていかなくてはいけないのだが、お客さまを「楽しませること」よりも「買わせること」に重点を置いてきた三井不動産が、コト消費の魅力づくりの対策ができるのかどうかは、未知数と言える。

特に三井不動産は立地の良いところに施設を立てて集客したり、アウトレットの安さで集客したりする術にはたけているが、コンテンツ作りやSNSなどの情報発信による集客戦略には不慣れな印象がある。三井不動産がどのようなブレーンを抜擢して誠品生活を回すのか、その点が長期戦略を考える上での勝負の分かれ目になるのではないか。

今後の商業施設のあり方を占う存在

このように考えると、誠品生活の日本進出は、今後の商業施設のあり方を占う大事なターニングポイントにもなりそうである。サブスクリプションやシェアビジネスなどの「買わない消費」が主流になる昨今、果たして「買わせる消費」を主体としてきた商業施設がどのような策で生き残っていくのかが見ものだ。

ここ数年、どこの商業施設もコト消費を狙った販促を仕掛けているが、実際にコト消費をマネタイズ化した事例は少ないのが実情。誠品生活は日本に新しいコト消費の姿を見せてくれるのか、それとも、ワークショップが集客のコンテンツとして機能せず、消費者が誤解して“誠品生活は蔦屋書店のパクり”と揶揄されるようになるのか。どちらにせよ、2019年の秋は、日本橋周辺の商業施設が熱くなることだけは確かなようである。自腹で台湾まで来た甲斐はあったと言える。

竹内謙礼(たけうち・けんれい)
有限会社いろは代表取締役
大企業、中小企業問わず、販促戦略立案、新規事業、起業アドバイスを行う経営コンサルタント。大学卒業後、雑誌編集者を経て観光牧場の企画広報に携わる。現在は雑誌や新聞に連載を持つ傍ら、全国の商工会議所や企業等でセミナー活動を行い、「タケウチ商売繁盛研究会」の主宰として、多くの経営者や起業家に対して低料金の会員制コンサルティング事業を積極的に行っている。著書に『売り上げがドカンとあがるキャッチコピーの作り方』(日本経済新聞社)、『御社のホームページがダメな理由』(中経出版)ほか多数。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
三越伊勢丹は「ゾゾ」に駆逐されるのか
なぜ"蔦屋書店"には必ずカフェがあるのか
サントリー山崎が1本3250万円もするワケ
ニトリの在庫回転の早さは「アマゾン」級
コンビニで1万円のケーキが完売する理由