このほかBYDは新エネ車のトップメーカーとして名が知られている。DJIは2006年創業からわずか12年で、世界シェア70%を有するドローン製造の企業にまで急成長した。台湾系の富士康(鴻海系)も工場は深圳が主力である。

中核部品は海外依存の体質

ユニコーン企業に成長したロボットの「UBTEC」社

イノベーション都市として急成長してきた深圳を襲ったのが、米中貿易戦争である。最大の標的は、ハイテク企業だ。米上下両院は今年8月、「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決した。その中には米政府機関が中国のハイテク企業5社の製品などの調達を禁止する内容が盛り込まれている。この5社のうち3社は深圳の企業、すなわちZTE、ファーウェイ、それにハイテラ(海能達通信)である。

ZTEは主力部品を米国に依存していたが、今春にその部品供給を止められて、一時生産中止に追い込まれた。年末にはファーウェイの副会長が米国当局の要請を受けて、カナダで逮捕されるという事件が発生した。ファーウェイの創設者である任正非氏は軍の出身なだけに、米国もかねてから目を光らせていた。

このほか、ネットサービス大手のテンセントは、中国政府が中核事業であるゲーム産業への規制を強化したことから株価が急落している。米中貿易戦争による先行き不安も下げの一因となっているようだ。

米国からの相次ぐ追加関税措置で、輸出にも影響が出始めている。深圳市の1~8月の輸出入額は1兆8600億元で、前年同期比9.6%の伸びにとどまった。とりわけ輸出は9861億元で、前年同期比で2.6%のマイナスとなった。深圳市は対米向け輸出企業が多いので、米中貿易戦争のあおりをまともに受けた格好だ。

中国企業の弱点は、先端技術を欧米日本など海外に依存していることだが、特に深圳の企業はそうした傾向が強い。ベンチャー向けの資金は豊富なのだが、それらの資金は基本的な技術開発にはあまり振り向けられない。

部品の海外依存はZTEだけではない。OPPOはCPU、ディスプレイこそ自前だが、メモリーやOSは海外からの調達に頼っている。BYDもエンジンは日本企業から手当てしている。ファーウェイも半分近くの部品は米国など海外からである。

成功したベンチャー企業が基本技術に投資

中国政府は自前の技術の開発を最近になって盛んに呼び掛けているが、そう簡単に方向を変えられるものではない。したがって当面は、苦しい展開が続きそうだ。

とりあえずはなんとか米国との通商交渉をまとめられるように必死に外交を展開するだろう。トランプ政権内にも穏健派がいるので、こうした勢力への働きかけが交渉のポイントとなってくる。

また米国内のスマホ部品を供給しているメーカーの中には、トランプ政権の政策と自分たちの商売とは別だと考えるところもある。 実際にある深圳のスマホメーカーは「わが社も米国から部品の提供を受けているが、関係は良好で、部品供給がストップすることはなかろう」と語っている。それでも安全のために、米国以外の日本や欧州に部品供給先を変えていく動きも出てこよう。

自前の技術開発も中長期で見れば、それなりに進んでいく可能性が強い。とにかく深圳には「ヒト」「モノ」「カネ」が揃っているので、その気になれば、自前の技術開発は出来ないわけではない。 とりわけ成功したベンチャー企業の動きが注目される。すでにテンセントやファーウェイは、基本技術への投資を増やす動きに出ている。その成果はいずれ出てこよう。