コメダが試験的に導入する「スパゲティ」

一方、店舗数810店(2018年9月末現在)と国内3位のコメダは、「コメダ珈琲店 宮益坂上店」(東京都渋谷区)で3種類のスパゲティを販売している。

「カルボナーラプレート」(1400円/いずれも税込み)、「ナポリタンプレート」(1350円)、「明太子プレート」(1300円)で、ドリンクがつく。商品名に「プレート」とあるように、ワンプレートにパスタと生野菜、フランスパンが盛られた内容だ。

コメダ珈琲店の「ナポリタンプレート」(筆者撮影)

一般客として店に行き、ナポリタンプレートを注文してみた。率直に言って、街中にあるパスタ専門店や個人喫茶店と比べて、もう少し改善が必要に感じた。コメダが得意としているサンドイッチやバーガーなどのパンメニューに比べて、道半ばに思えたのだ。まだ一斉導入という段階ではないだろう。

全店舗のうちFC店が97%を占めるコメダの中で、渋谷宮益坂上店は数少ない直営店であり、 “実験店舗”の意味合いも持つ。同店はタッチパネルでの注文を取り入れているが、他のコメダ店舗では見かけない。一方で、ブラックコーヒー「コメ黒」のように同店での導入後、全国の各店に展開していった商品もある。

他の競合店では、たとえばドトールは、別ブランドの「神乃珈琲」で生めんを使ったスパゲティメニューを提供する。「神乃珈琲 銀座店」(東京都中央区)で注文した「マッシュルームとパンチェッタのカルボナーラ」は、ドリンクつきで1890円。決して安くないが、コーヒーもフードも味は本格的だった。

カフェのフードが限定される3つの理由

なぜ大手各社がここにきて、フードメニューとして「パスタ」を導入するのか。これには、カフェ業態の立ち位置や店内条件と関係している。

(1) カフェはコーヒー中心のメニュー構成
(2) パンやパスタはコーヒーとの相性がよい
(3) 店は厨房も狭く、多彩な料理を調理しにくい

「紅茶の店」などの看板を掲げない限り、カフェの主力はコーヒーだ。昭和時代からコーヒーに合うフードメニューを試行錯誤した結果、トーストやサンドイッチといったパンメニューが中心となった。パスタも、コーヒーとの相性は比較的よい。

業界関係者を取材すると、よく「カフェはレストランではない」という言葉が出てくる。この真意は質問内容に応じてさまざまだ。少人数で店を切り盛りするという意味もあれば、レストランではないので、厨房スペースが限られるという意味もある。

個人経営の喫茶店(個人店)では、ハンバーグ定食やしょうが焼き定食を出す店があるが、大手チェーン店ではあまり見かけない。ドトール日レスホールディングスが運営する「星乃珈琲店」のように「ハンバーグプレート」が人気の店はあるが、これは運営母体が多彩なレストラン事業を持つため、スケールメリットで提供できる例外的存在だ。