なぜ営業部との軋轢を解消できたのか

「やはり、当初、軋轢はありました」

急逝した宿澤の後を継いで、CA本部長に就任した山中龍夫常務はこう振り返る。設立から3年近くが経過する中で軋轢が解消し、法人営業部とCA本部のダブルフロントが円滑に機能するようになった。これは、実績を通じて、CA本部の機能が法人営業部の活動に資するという理解が深まったからこそだ。

しかも、現在、企業は大変革期に突入している。同本部で業界別の9組織と、ファンド対応の別組織の合計10ラインを企画・管理面からサポートする情報マーケティング部長、吉岡成充は「10年で考えればよかったことが1、2年で答えを出さねばならなくなった」と、企業経営の時間軸が激変したことを実感する。結果として、「業界再編、事業の切り出し、アライアンスなどの案件が増えている」と山中も目を見張るように、100年に一度といわれる危機の中で企業は生き残りを懸けたソリューションを確実に求め始めた。これは、銀行、そして、CA本部の真価が問われるということにほかならない。

ダブルフロント対応で顧客への対応が迅速に!
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ダブルフロント対応で顧客への対応が迅速に!

そんなCA本部の具体的な活動とはどのようなものなのか。

「マーケットオフィサーとして情報を集めることに徹する。その情報に基づいてビジネスを深めることは法人営業部が担う。シームレスの意味をそう解釈しています」

情報・通信・コンテンツ業界を担当するセクションの部長である萩田義夫はこう切り出した。机上に広げたのは、隙間なくびっしりと企業群がマトリックス化されたA3サイズ用紙2枚。それぞれ、「ITソフトウエア企業業界図」「ネット・モバイル・コンテンツ企業業界図」というタイトルの下に、300社強、200社強の企業名がその業容の説明を付して書き込まれ、資本関係などがある場合には当事者企業同士が線で結ばれている。素人にとっては、壮観というよりも、ややウンザリするほどきめ細かい資料だ。

「3カ月ごとに作り直す」というこの相関図の上に存在する企業が萩田とその部下の担当領域であり、合計570社だという。このうち、萩田自身は350社をすでに訪問し、このうち170社の社長と資本戦略、事業戦略に関する議論をしている。そして、顧客のニーズに基づいて事業提携などのために「1年で100件ほど顧客同士を引き合わせている」とこともなげに説明するが、営業日数を単純計算すると2日に一件。とてつもない頻度である。

M&A、MBOなどの複雑な案件はCA本部が解決!
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M&A、MBOなどの複雑な案件はCA本部が解決!

もっとも、面談時間はそれほど長くはない。せいぜい30分ほどである。それで十分なのは「顧客とのリレーションは法人営業部がやっているので、我々は経営企画の担当者や経営者に会ってソリューションの本題を単刀直入に話す」からだ。要するに、情報収集に徹しているわけだ。

その中で顧客から資本政策やM&Aなどの意向を打ち明けられれば、銀行の企業情報部、企業調査部や大和証券SMBCの企業提携部といった担当部門を紹介する。実際に具体化した案件は少なくないが、それで萩田のセクションが手数料などの収益を稼ぐわけではない。最も重要なことは「顧客企業に長く生きてもらうこと」であり、顧客企業、その経営者から「あのとき、世話になった」と感じてもらうことだという。(文中敬称略)

(的野弘路=撮影)