小さなケガは絶えなかったが、契約更新のことを考えて会社には黙っていた。残業手当での変動はあったが、平均すると給料は手取りで月16万円ほど。

「最初の話とまったく違う。手取りで20万円を超えた月はなかった」

日野自動車の場合、同じフリーターでも「期間工」と「派遣」で待遇が異なる。

前者は日野自動車の直接雇用で、後者は日野自動車との雇用関係はない。期間工は日給制で1日9000円、派遣は時給制で1時間1150円。期間工は年2回の長期休業手当と、一定期間働くと慰労金が出るが、派遣はどちらもなし。そのうえ、期間工は日野自動車の寮に入れるため家賃はかからないが、派遣は毎月3万8000円を「寮費」として日研総業に徴収される。年収にすると、期間工と130万円近い差がついた。

後にわかったことだが、日研総業は日野自動車から1時間1750円を受け取っていた。つまり、日研総業の取り分は約35%に及んでいた。

「同じ仕事をしているのに、なぜこれだけ格差があるのか納得できなかった。何より、派遣というだけで、社員が俺たちを見下すのが我慢できなかった」

06年10月、同僚とともに日研総業ユニオンを設立すると、執行委員長に就任。同時に非正社員の労働団体「ガテン系連帯」の創立にも携わった。07年の春闘の結果、派遣の時給は100円アップ、寮費は3000円引き下げられた。

和田さんは契約切れのため07年8月末で日野自動車を去ったが、別の職場で派遣社員を続ける道を選んだ。派遣の身分のまま、登録型派遣、製造業への派遣、スポット(日雇)派遣……、それらを認めている現行の派遣法の抜本的改正に向けた取り組みを行うためだ。現在は組合活動にやりがいを感じていると語る。

とはいえ、生活は苦しい。これまで派遣先から3回ほど溶接関係の仕事を紹介されたが、労働環境に満足できず断った。寮費さえ払えば住まいは確保できるが、貯金はない。今は、たまに知り合いから頼まれるトラック運転手の仕事をしながらなんとか収入を得ている。少しでも就職に有利に働くように、フォークリフトの免許をとるのだと話す。

「不安です。定職に就いて、なんとか手取りで20万円はほしい」

(イメージ写真(2枚目)=早川智哉)