パパ活が結婚生活の維持・安定に「貢献」する逆説

1980年代、電話を介して男女の出会いをマッチングするテレフォンクラブ(テレクラ)が流行り始めた当初、利用者の多くは援助交際目的ではなく、純粋に恋愛をしたい男女が集まっていた。2000年代の出会い系サイト、2010年代のSNSもそうだ。

男女の出会いをマッチングするメディアは、いずれもスタート時は「純粋に恋愛相手と出会える場所」として注目を浴びる。

しかし利用者数が増えるにつれてサクラや詐欺、売買春目的の男女が参入し、社会的なバッシングを受けて、荒れ果てて衰退していく……という流れをたどるのがほとんどだ。

純愛を求める真面目な既婚者のたどり着く先が出会い系サイトや交際クラブしかないという現実、そしてパートナーとのセックスレスに悩む男女にとって、パパ活が結婚生活の維持・安定に「貢献」しているという逆説は、現代社会の生きづらさを端的に表しているのではないだろうか。

純愛を求めるほど、純愛から遠ざかるというジレンマ

交際クラブの存在を「満たされない結婚生活を送る人の弱みに付け込んだビジネス」と考えるか、「構造的欠陥を抱える婚姻制度を補完するための有用な社会資源」と考えるかは、判断が分かれるところだろう。

坂爪真吾『パパ活の社会学』(光文社新書)

純愛を求めれば求めるほど、身体を重ねる人数が増えていき、特定の相手との関係を維持することが難しくなり、ますます純愛から遠ざかる……というジレンマ。

純愛を求める人にとって、交際クラブの世界は完全な袋小路である。しかし、全ての人には、そうした「袋小路に迷い込む自由」があるはずだ。

たとえそれが実現できないと分かっていても、あえて純愛というフィクションを追い続けることによって、日々の生活に潤いと張り合いがもたらされるのであれば、それは一つの生き方として尊重されるべきではないだろうか。

彼らや彼女たちの姿は、「たとえそれが実現できないと分かっていても、あえて恋愛や結婚というフィクションにすがり続ける人たち」=すなわち私たちと構造的には全く同一なのだから。

坂爪真吾(さかつめ・しんご)
ホワイトハンズ代表
1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。新しい「性の公共」をつくるという理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰。著書多数。
(写真=iStock.com)
【関連記事】
夫婦円満な外資OLが"パパ活"をするワケ
セックスをしても女性ホルモンは増えない
本当は恐ろしい"男女で一線を越える行為"
小学生がハマる「TikTok」の動画リスク
「パパ活」で荒稼ぎする女性を止める方法