医療費の負担を抑えるには、なにがポイントになるのか。「プレジデント」(2017年2月13日号)では11のテーマに応じて、専門家にアドバイスをもとめた。第5回は「就業不能」について――。(第5回、全11回)

給与所得者には手厚い保障がある

現役世代にとって、収入が途絶えたり、減少することに対する恐怖は昔に比べて格段に高まっています。近年の税金や社会保険料のアップで、年収が変わらなくても手取り収入が減少する世帯がある一方、教育費は年々増加。児童のいる世帯の約6割以上は「生活が苦しい」と感じています。

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また、以前だったら助からなかった命も医療の進歩によって永らえる半面、重い障害が残り働けずに収入が減少することを考えると、生命保険だけでは心もとないと感じる人もいるのでしょう。子どもの教育費や住宅ローン返済など多くを背負う現役世代。長期にわたり収入が途絶えれば、家計は深刻な状況に陥るでしょう。

このような現役世代の心配に裏打ちされて注目されつつあるのが「就業不能保険」です。最近、多くの生命保険会社が取り扱いを開始しており、認知度も高まってきました。この商品は、病気やケガで働けない一定の状態(取り扱い各社・商品で異なる)を「就業不能」とし、給付金を支払うものです。重い病気やケガ・障害などで、60日以上などの長期にわたる就業不能状態での収入減少に備えるのが目的ですが、長期療養になりがちな精神疾患については、給付の対象外とする商品も少なくありません。なお、失業やリストラで仕事ができない状態は就業不能ではないので、この保険では備えられません。

給付期間は商品により異なります。就業不能状態が続く限り、65歳までなど長期にわたり給付を受けられるものや確定年金のようにあらかじめ定めた期間について給付金を支払うもの、一時金で給付するものもあり、給付要件や給付期間等をよく確認することが大切です。

ですが、就業不能保険の検討に先だち、まずはいざというときに強い味方となる、社会保障給付を押さえることから始めましょう。

サラリーマンの場合、業務上の病気やケガに対しては労災保険があります。療養のため4日以上欠勤した場合、「休業(補償)給付(+休業特別支給金)」が、一定の障害が残った場合には「障害補償給付」などが受けられます。業務外の病気やケガでは、4日以上欠勤せざるをえなくなれば、健康保険から「傷病手当金」が給付されます。1年6カ月間、給与の3分の2が支給され、給与の出ない欠勤状態でも、急に無給状態にはなりません。