これは仮説にすぎませんが、困難やアクシデントを前にして生き抜く力を与えてくれるドラマや物語というものを模索していった結果、たどり着いた“定型”が勧善懲悪ものであり、「首尾一貫感覚」に通じるものだったということではないかと思います。人々は、日々の苦労や生活難を忘れて、これらのドラマや物語を見ることで、「明日また頑張ろう」と勇気づけられたのではないでしょうか。

ここには、もう1つ大切なヒントが隠されています。それは、「首尾一貫感覚」は子どもたちが受け入れやすい感覚であると同時に、大人になってからでも後天的に高めることができるものだということです。

「折れない心」は後天的にも身につく

首尾一貫感覚を構成する3つの感覚は、それぞれがバラバラにあるわけではありません。お互いを補完しあうようにつながっています。 たとえば、「把握可能感」で「だいたい把握できている」と思うことは、「(いま把握できている範囲で)なんとかなるだろう」という「処理可能感」へとつながります。

舟木彩乃『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)

逆に、相談できる人やお金、権力、地位、知力などの、処理可能感を高める「仲間と武器(=資源)」を使って、把握可能感を高めることもできます。また、「自分自身に起こる出来事にはすべて意味がある」という「有意味感」を生み出す価値観や考え方、アイデンティティなども、処理可能感を高めるための「武器」になるといえます。

「首尾一貫感覚が高い人は、特別な境遇にある人や選ばれた人である」と思われる方もいるかもしれません。しかし、首尾一貫感覚は、先天的なものではなく、後天的に高められるものです。だからこそ、苦難に直面した時や、過剰なストレスに押しつぶされそうになっている時に大きな力になるものだと理解していただきたいのです。

(*参考文献) 山崎喜比古・戸ヶ里泰典『健康生成力SOCと人生・社会 : 全国代表サンプル調査と分析』(有信堂高文社)

舟木彩乃(ふなき・あやの)
ストレス・マネジメント研究者
10年以上にわたってカウンセラーとしてのべ8000人以上、コンサルタントとして100社を超える企業の相談に対応。一般企業の人事部や国会議員秘書などを経て、2015年に筑波大学大学院に入学。修士課程修了後、同大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻(博士課程)に在籍中。主な論文に精神科医に求められる役割とメンタルヘルス」「国会議員秘書のストレスに関する研究」など。
(写真=iStock.com)
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