「パパ活」は禁止すべきか

(問題)組織的な暴力に関与しないような、本人の意志にもとづく「パパ活」や売買春は禁止すべきか?

選択肢は以下の三つとします。

(1)本人がよければ、別に禁止する必要はない。
(2)社会的な制度として認めることはできない。
(3)積極的に容認する方向で、安全な制度を考える。

(5人程度のグループに分かれて10分間のディスカッション)

【岡本】さて、いかがでしょうか。

【受講者A】まず、本人の意志だけにもとづいて許可する(1)は、性感染症についての知識が完全でないまま性交渉に及ぶリスクがあります。お金がほしいからとりあえずやってみてあとで大変なことになる事態を防ぐ必要があるのではないでしょうか。

一方で、そういうことを一切合財禁止してしまうと、特に男性にストレスがたまり、社会的なひずみが生じてしまうのではないかという意見も出ました。歌舞伎町や六本木がなくなるとどうなるだろうと想像すると、一概には否定できません。

結果的に、(3)なのかなと。

他人の自由にどこまで関わるか

【受講者B】前回のバイオサイエンスの話に立ち返ると、遺伝子操作を認めたくない理由の一つとして、自分が考える社会のあり方が侵されるという恐れが挙がりました。今回も、同様の感情が大前提にあるのだと思います。

ですが、これは結局、たとえばトランプ大統領がゲイを毛嫌いするのと変わらないスタンスという気がします。積極的に促進する(3)は行き過ぎとしても、(1)がいう、禁止する必要はないという点については、個人的には同意せざるを得ません。

【岡本】他人の自由に対してどのように、どこまで関わるのかは、非常に大きな問題ですね。

逆に、積極的に禁止すべきというご意見はありますか?

【受講者C】個人といっても、完全に独立した存在ではありません。社会のなかの個人であって、他者と切り離すことはできませんから。したがって、ある程度禁止をしたほうがいいと思います。

【岡本】「何をしようと個人の自由ではないか」という主張に対して、そもそも個人とは一人だけで成立するのだろうかと問うわけですね。『これからの「正義」の話をしよう』で有名なアメリカの哲学者、マイケル・サンデルの立場がこれにあたります。