いい人材を雇い、能力を発揮してもらう
具体的には、どういうニーズがあるのだろうか。
「快適性についてはまだ研究の余地がありますが、音、温度・湿度、光、緑化、さらには飲食環境なども含まれます。要は、寝ている時間や通勤時間を除けば、働く人は多くの時間をオフィスで過ごすので、その場所が快適かどうかは、すごく大事な話だということです。
オフィスに求める要素について、多くの企業が『従業員のモチベーション向上につながる』『従業員がリフレッシュできる』『従業員のワークライフバランス向上につながる』といった項目を挙げていることは特筆すべきことでしょう」
オフィス内に多様なワークエリアを設け、働く場所を自由に選択できる「ABW(Activity Based Working)」を実現しようとする動きも当然、オフィスに質的変化をもたらしている。
「たとえば、各人の固定席を作ってそこで働くというスタイルばかりでなく、たまにはオフィスの中の別の場所で仕事をするとか、立って仕事をするとか――。そのために、リフレッシュスペースやオープンなミーティングスペース、休憩室、仮眠室を設けるケースが増えています。
こうしたゆとりある柔軟なスペースをレイアウトするには、これまでいたビルを離れ、新たなビルに移ったほうがやりやすいのは当然です。だから、移転をきっかけに働き方改革を実践する、働き方改革を実践するために移転するという企業が多いわけです」
つまり、企業にとっての生産性や付加価値を高めるために移転するケースが増えているということだ。
「このような理由でのオフィスづくりは、かつては外資系IT企業や先進的な大企業を中心に推し進められてきました。それがいまや、業種や事業規模にかかわらず広く前向きに取り組む動きが見られます。
企業が『生産性を向上させよう』とした場合、製造業であれば比較的わかりやすいものです。端的に言えば、安くて売れる製品を多く作ることですから。日本企業の多くはすでにこれを実現しています。
しかし、産業の7割以上はサービス業。その生産性を向上させるのは容易ではありません。付加価値が高いこと、知的生産性を上げることが大事です。それを実現するために主役となるのは『人』。また、知的生産性にも何段階かありますが、知的創造のためには『場』の活性化が欠かせません。
だから企業としてはまず、いい人材を雇い、次にその能力が最大限発揮できるような環境を作ることが大事になります。オフィススペースの拡張需要が旺盛なのは、そうした判断を各企業がし始めている証ともいえます」
これからのオフィスは、働く場所、時間、メンバーがフレキシブルに変動することを可能にするものでなければならない。それがいま、企業にとって最大の関心事になっているというわけだ。
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