国立大学は「補助金増額」以外の創意工夫を

関西国際空港もそうだった。いまでこそ成田の営業利益を超えるようになり、過去最大の利用客数となっている関空だけど、僕が知事に就任した2008年当時は、就航便数や利用客数が少なくてどうしようもなかった。そして、恒例の補助金。毎年、国からは200億円近くの補助金が出ていた。関西の自治体からも合計で10億近くの補助金。それでも関空は一向に経営改善しない。

僕はまずは関空の補助金を0にして、関空や国土交通省に危機感を持ってもらった。そして当時の前原国土交通大臣が知恵と工夫で練り上げた関空・伊丹統合+運営権民間売却案なるもので、みごと関空は復活した。LCCと貨物の拠点空港という位置づけを明確にし、物販飲食で儲けて、航空会社の発着陸料コストを下げる。今は補助金なんかなくてもきちんと営業をしている。

伊丹空港も完全民営化となって、これまでとは全く異なる空港になった。それまで南北離れて別れていたJALとANAの出口が二階の真ん中で一本化された。そして出口扉を出ると、そこには洒落たショッピング街が待ち受ける。

さすが民間だよね。JALとANAで出口が別れていたら、お店もそれぞれにばらけるし、店の前を通るお客もJALとANAの客でばらけてしまう。昔は、大阪名物豚まんの551蓬莱の店もANA側の出口にしかなかったんだよ。

倒産のリスクがない、売り上げを伸ばす必要のない国営伊丹空港だった時には、誰もそんな状態を変えようとしなかった。しかし、補助金もなく、自分たちで努力しなければならなくなった新生民間伊丹空港は、出口を一本化すれば、客の流れが倍になることを見逃さなかった。そしてその上で、ショッピング街も一本化。

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国営空港だった時に放ったらかしにされていた、タクシーターミナル、バスターミナルもみごとに整理された。それまで結構な利益が上がっていた駐車場や飲食店が集まるターミナルビルは、それぞれが天下り団体になっていて、利益が天下りの懐に消えていた。それらも全て新生関空・伊丹統合会社に合流させて、その利益を新生会社に合理的に使ってもらうようにした。このようにして天下りの懐に消えていたお金が、空港施設への投資に回るようになったんだ。

商店街だって、銭湯だって、補助金がなくなれば、自分たちの知恵で創意工夫するしかなくなる。全国どこでも同じだと思うけど、商店街振興策は、年末の餅つき大会、夏の夜店、福引セールに、カラオケ大会などのイベントへの補助金ばかり。それも毎年同じイベント。そんなことで商店街が活性化するわけがない。

ほんと補助金って、麻薬みたいなものなんだよね。これにいったん浸かってしまうと、もうあとは補助金の増額しか言わなくなるんだよ。

国立大学協会の会長は、京都大学の学長だ。いつもイノベーションだ、創意工夫だと言っているくせに、自分たちの補助金のことになると、旧態依然とした、役所に補助金増額をお願いするやり方しかやらない。そこにイノベーションや知恵と創意工夫の姿形は全く見えない。

国立大学協会や文部科学省の国立大学法人支援課が作っている資料を見ただけで、こりゃ日本の大学はダメだわな、と感じるね。僕が知事、市長のときに経験した、役所と事業者のダメな主張の典型例。こういうのを正すことこそが政治の役割であって、柴山昌彦文部科学大臣の手腕に期待している。

(略)

(ここまでリード文を除き約3000字、メールマガジン全文は約9600字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.124(10月23日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【大学改革と観光行政(1)】大阪で実証! 補助金削減&創意工夫こそが成長へ続く王道だ》特集です。

(写真=時事通信フォト)
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