医療費の負担を抑えるには、なにがポイントになるのか。「プレジデント」(2017年2月13日号)では11のテーマに応じて、専門家にアドバイスをもとめた。第2回は「高齢者」について――。(第2回、全11回)

大企業健保加入者は、介護保険料がアップ

社会保障費の伸びを抑制するため、2017年度の予算案では高齢者や所得の高いビジネスマンに医療費や介護保険料の負担増を求めるなど3つの柱が決まりました。医療・介護制度の改革が急がれる背景には、団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」があります。

まず負担増の第1は、高額医療費で70歳以上の高齢者の自己負担です。例えば、年収370万円未満で住民税を支払う中所得者は17年8月以降、外来受診時の上限が月額1万2000円から1万4000円。さらに、18年8月には1万8000円に上がります。

また、入院と外来を合わせた世帯の自己負担上限も月額4万4400円から17年8月には5万7600円となります。ただし、高齢化に伴い慢性疾患などで頻繁に通院する患者に配慮して年間14万4000円の上限が新設されたのは朗報でしょう。

第2は、後期高齢者の保険料軽減特例の見直しです。74歳まで夫や子どもらに扶養されていた高齢者や比較的所得の低い人は現在、保険料を9割軽減されていて、その金額は月380円。これを17年度から7割軽減にし、18年度には軽減を5割まで引き下げるというものです。

そして第3の負担増は、介護保険を負担している40~64歳の現役世代、とりわけ大企業社員の保険料アップです。これは介護保険料が収入に連動して増減する「総報酬割」が17年8月から4年かけて段階的に導入されるからです。所得が高い人たちの負担を増やして、介護保険制度の持続性を高めるのがねらいです。

その結果、収入が少ない中堅企業などの健康保険組合に加入する人の保険料が今より下がる一方、大企業の健保組合加入者の保険料は上がります。厚労省の試算では、大企業の多い1408健保組合の平均で月727円の負担増です。年収の高い上位組合で見ると、年収841万円の人では月当たり5668円と大幅に増えてしまいます。