3期連続営業赤字でも年500億研究開発費削らず
BSでもう1つ注目されるのが、土地、建物、機械設備などで構成される有形固定資産の比率が全資産の5.8%強と驚くほど小さいことだ。
「有形固定資産の少なさから自社工場を持たず生産を外注する『持たざる経営』だと読み取れます。有形固定資産が少なければ、業績変動があっても柔軟に対応できます」(石野さん)
たとえ続けてヒットが出なくてもそれに耐えられるだけの財務体質であるとわかる。
実際、Wiiの稼ぎがピークとなった09年3月期は売上高が1兆8000億円を超えたが、翌年から下がり始め、17年3月期は5000億円を割っている。
12年発売の「Wii U」の累計販売台数がWiiの7分の1と不発。そのため12年から14年3月期は営業利益が赤字に転落する冬の時代だった。それがスイッチで息を吹き返し、今期営業利益は前年比5.4倍の1600億円を見込む。
スイッチで業績は上向くだろうがこれもまた永続的ではない。
楽天証券経済研究所のアナリスト、今中能夫さんは「大ヒットしたWiiでも、お客さんもソフトメーカーも飽きてしまうので、市場の拡大期3年間、縮小期5年間の8年間のライフサイクルでした」と説明する。
ヒット商品の創出を下支えするのは500億円以上の水準で維持される研究開発費だ。これを売り上げに左右されず捻出できるのは莫大な手元資金があってこそ。「だから冒険もできる」と今中さんは続ける。
「Wii発売の2年目に『Wii Fit』というゲームなのかフィットネスなのかわからないユニークなソフトが出て大ヒットしました。スイッチでも『ニンテンドーラボ』という伝統的なおもちゃの世界とテレビゲームを融合したようなソフトが出る予定です」
高い利益率から積み上がった豊富な手元資金は、売り上げ不振の間も研究開発を続ける原資となり、やがて今までにないゲームを生み出す。それがヒットすればまたキャッシュを積み上げることになり、次のヒットまでをつなぐ資金となるのだ。