昨年登場したiPhone Xは、同時に発表された大画面モデルの「iPhone 8 Plus」より表示パネルのインチ数は大きかったものの、実質的な表示領域は狭かった。iPhone X非対応のアプリの場合はパネルの天地に何も表示されず、さらに表示領域が小さかった。iPhoneに大画面を求めるユーザーにとっては、iPhone XS Maxの登場は待望だっただろう。

売れ筋は間違いなく「iPhone XR」

iPhone XSシリーズと比べると、表示パネルが有機ELではなくIPS液晶、カメラのレンズがデュアルではなくシングル。それでいて表示パネルのサイズはXSとXS Maxの間。そして、新モデルの中では最も安い。このように、非常にややこしい立ち位置にいるのが、今回の発表会で最後に披露された「iPhone XR」だ。

シングルレンズながらアップル最新のテクノロジーが詰め込まれたiPhone XR。今回発表のモデルの中では安価で人気が出ると考えられる(アップルのプレスリリースより)

XRは廉価版という位置付けと考えられるが、SoCはXSシリーズと同じApple A12 Bionic。そして前面には顔認証のFace IDに対応した「TrueDepthカメラ」を搭載する。顔認証だけでなく、顔の表情をリアルタイムに反映できる絵文字の「アニ文字」や「ミー文字」も利用できる。ボケ効果や深度をユーザーが手動で調整できるカメラ機能も使える。

廉価版としては、2013年にリリースされた「iPhone 5c」があったが、同時期の上位モデルに比べて明らかにスペックが劣っていたうえ、それほど安価ではなかったこともあり、一代で姿を消した。一方、XRはXSシリーズと肩を並べる性能を備える。アップルにとって再チャレンジとなる廉価版だが、安価で処理性能にも優れるXRは今回のラインアップで人気機種になるのは間違いなさそうだ。

昨年、iPhone Xは発売直後の人気は高かったものの、1年を通してみると売り上げランキングではXよりも安価なiPhone 8が上位となることが多かった。XRが8のような存在になるか注目したいところだ。

残念な価格設定で旧機種が売れる可能性も

こうした廉価版を投入するのも、新しいiPhoneの価格がかなり高いことをアップルが認識しているからだろう。アップル直営店やオンランストアで販売されるSIMフリー版の税別価格は、iPhone XSが11万2800円から、XS Maxが12万4800円から、廉価版のXRですら8万4800円からだ。