日本の社会保障制度は意外に手厚い。国や市区町村だけでなく健康保険組合などからも給付金や補助金が出るケースが多い。例えば、1人を出産し育児するとほとんどの人が計250万円の支援を受けられる。しかし、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏は「それらの多くが自ら申請しないともらえない仕組みだ」と指摘する。もらえるお金の一部を紹介しよう――。

※本稿は、井戸美枝『届け出だけでもらえるお金 大図解』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「もらえる社会保障」は申請しないともらえない

皆さんは、日本の社会保障制度の「中身」をどの程度ご存じでしょうか。

井戸美枝『届け出だけでもらえるお金 大図解』(プレジデント社)

失業したときの「失業給付」、病気やケガで働けなくなったときの「傷病手当金」など、もしものときのセーフティーネットから、「出産育児一時金」「児童手当」といった子どもがいる世帯への支援など、さまざまなものがあります。名前は聞いたことがあるけれど、よく知らない……。そういった人も多いのではないでしょうか。

こうした制度の多くは、原則的に「自分から申請する」必要があります。

自治体や各団体は、制度が必要になった人に対して案内、周知にも努めていますが、やはり限界があります。そこで、読者の皆さんも、内容のディテールまで知る必要はありませんが、「こうした制度がある」ということは最低限抑えておきたいところです。

また、これらの財源は、税金や保険料です。政府は集めたお金をどう分配しているか。何に使っているか。チェックしておきたいものです。本稿では、比較的利用する人が多いであろう身近な社会保障制度をピックアップします。

妊娠から出産まで少なくとも約252万円の支援あり

まずは、出産や育児・子育てに関するものです。

子育ての不安の1つは「お金」でしょう。結論を先に申しますと、妊娠から育児までの公的な支援として、少なくとも約250万円を受け取ることができます。

妊婦健診に約10万円、出産時に42万円、子どもが中学校を卒業するまでの児童手当。これらを合計すると約198万円になります(※ただし児童手当には所得制限がある)

ちなみに、日本の2017年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯産むと推計される子どもの数)は1.43。政府は1.8への引き上げを目標にしており、今後も出産や育児に関する支援は拡充される可能性があります。2019年10月からは幼児教育・保育の無償化が始まり、より支援は手厚くなる傾向にあります。

では、出産や育児・子育てに関する助成制度を詳しくみてみましょう。