「きっかけは年末調整のとき、5万円の生命保険料控除以外に積立年金保険も5万円控除されるのを知ったことでした。これだけ控除されるならもったいないから入ろうと、40歳から積み立てを始めました。毎月払うだけでなくボーナス時期に上乗せして結構払いましたね。結果的に掛けた金額の倍以上の年金を受け取ることができました」

個人年金の10万円は10年間の有期年金。山本さんの収入合計は37万円になるが、妻も結婚前の10年間に複数の会社の正社員として働き、厚生年金と独自の個人年金を受け取っている。両方で40万円ちょっとになるが、「贅沢しないのでなんとかやっています。個人年金は75歳で終わるので収入は27万円程度になります。病気などで一時的に何かあれば定期を取り崩すこともあるかもしれませんが、節制してやっていくつもりです。妻からは先日、『早く逝っちゃってよ』なんて言われましたが(笑)」

すでに2人の子どもも自立し、60歳のときに毎月5万円以上支払っていた生命保険を整理し、不可欠な介護保険など月に1万円程度に縮小した。自家用車も必要に応じてレンタカーに切り替えることを考えている。

山本さんは45歳から地域の子ども会の活動に参加し、今も地元の自治体の上部団体の会長を務めるなどさまざまなボランティア活動に参加している。

「地域の活動をしていてつくづく思うのは、人間は絶対に1人では生きていけないということです。よく居場所がないという人がいます。仕事一筋だった職場の先輩が退職後に生きがいを失ってすぐに亡くなる人が結構います。自分の住む地域は決して遠い存在ではなく、自分から近づけば身近なものになる。これまで職場でも福祉のケースワーカーなどさまざまな経験をしてきましたが、今後は自分の住む地域の民生委員をしたい」と言う。

地域で居場所を見つけるには、定年前の若いときから小さな活動でもいいので始めるべきとアドバイスする。

(撮影=研壁秀俊)
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