持ち込み企画でイベントをやりたいというオファーが増えてきたことは、円頓寺商店街のブランド化が成功している証左であろう。

「ここでイベントをすると高感度で情報発信力のある層を集客できる」というイメージがついてきているのだ。

そこでこのオファーを積極的に受けて、アーケード使用料ほかサービスをパッケージにして商店街の臨時収入とすることにした。この収入は、アーケードの管理維持費に回ることになっている。

評判が評判を呼び、次々と新たなイベントのオファーが

平成28(2016)年には食品メーカーのカゴメがトマト祭「トマトマ」を行い、おおいに賑わった。従来のトマト祭は既存の店でカゴメ商品を使った料理を提供してもらうという形だったが、それでは店に来たお客さんにしか体験してもらえないので、外のスペースで試食や製品PRを行いたい、ついては、パリ祭で多くの女性客や飲食に感度の高い客を集める円頓寺商店街で、ということだった。

こうなると評判が評判を呼び、次々と新たなイベントのオファーが舞い込んでくる。持ち込まれるイベントの種類も、パリ祭を評価してくるだけに、平成29(2017)年は「NAGANO WINEフェスタ」であったりと質感の高いものが多い。まさに好循環が生まれている。

平成29(2017)年でパリ祭は5回目を迎えたが、人出はさらに増え、早い時期から問い合わせも来るようになった。そして、頼まなくても名古屋の秋の風物詩としてメディアで報道されるようにもなった。

商店街の老舗も、古くからの常連客から「もう、そろそろパリ祭の季節ね」とか、「今年はパリ祭いつ?」と訊かれたりするようになり、自分たちの祭りなんだという意識が高まった。

山口 あゆみ(やまぐち・あゆみ)
フリーライター、編集者
1965年、横浜生まれ。日本航空機内誌『SKYWARD』の編集長を経て、現在は独立し、自社で雑誌、単行本の出版など活字媒体を制作するほか、さまざまな企業のブランディング・PR、会員向け事業でのコミュニケーション開発なども手掛ける。 共著に『エーゲ海の小さなホテル』(東京書籍)。22万部のベストセラーとなった『キリンビール高知支店の奇跡』(講談社+α新書)では取材・構成に携わった。
【関連記事】
9年連続日本一「スタバ苫小牧店」の奇跡
地方を変えるのは巨大計画より小さな店だ
"実家"は2022年までに売らないとヤバい
福岡で今一番熱い街"マツロッポン"の魅力
熟年カップルの"ラブホ利用"が増えている