「価格破壊」が起きたとき、土屋鞄は生き残れるか

中期的な視点では、現在の「ラン活」の過熱ぶりは、どこかで落ち着きを取り戻すだろう。その時、どのような形で「価格破壊」が起きるのかが気になるところだ。

(上)ランドセルを試着して、ピースサインをとる子供もいた。/(下)工房の手前には子供が見学できるスペースも設けられている。

たとえば、新社会人や新成人が着るスーツ業界では、20年以上前にこの現象が起きた。「洋服の青山」(青山商事)などの量販店から、格安スーツが生まれたのだ。その結果生じた「価格破壊」は、1994年の「新語・流行語大賞(トップテン入賞)」に選ばれた。これ以降、価格全体も下がり、現在も90年代前半より「一定の良質なスーツ」の価格は数万円安い。

年々価格が上がるランドセルに、この現象が起きないとは限らない。そのとき、土屋鞄のようなメーカーはどう対応すべきだろうか。

筆者は「納得価格を高める努力」だと考える。土屋鞄のランドセルは人気だが、「転売などの深刻な問題は認識していない」(広報担当・三角さん)という。それはすべての商品を直営店で販売するからだろう。特別な事情がなければ、複数個の注文は受けておらず、その理由は「一人でも多くのお客さまにランドセルをお届けする」ためだ。また6年間の修理保証がついており、使用上問題のない汚れや落書きを除けば、無料で直してもらえる。

こうした取り組みを続ける一方で、細部の使い勝手も改善していく。それこそが、ブームが去った後にも残る「ファン」を育てる近道だと思う。

高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
(撮影=プレジデントオンライン編集部)
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