2016年に起きた「ラン活」の“事件”

2016年7月1日、公式サイトで「2017年入学用のランドセル受注」を開始したところ、アクセスが殺到し、グーグルの急上昇ワード2位に「土屋鞄」が入った。12時間で約350万のアクセスがあり、サイトはつながらず、電話も殺到した。

この反省から受け入れ態勢を見直した。2019年入学用では、今年5月15日までに申し込めば、希望商品を製作する(約1カ月は販売終了にしない)という措置をとった。一部の商品に人気が集中して、「買えた」「買えなかった」の不公平を是正するためだ。

5月下旬の西新井本店の店頭。色とりどりのランドセルが展示されていた。

10年で売れ筋価格は2倍に上昇

「ラン活」の事情がわからない読者は、一度、小売店のランドセル売り場をのぞいてみてほしい。「こんなに高かったかな?」という感覚を持つはずだ。業界団体の「日本鞄協会 ランドセル工業会」によれば、近年「ランドセル価格」は上昇中だ。1984年に「2万2000円」で、2007年まで2万円台だったが、その後ジワジワと上昇。直近データである2014年には4万2400円まで上がっている。また同団体の2018年のアンケート調査では、平均購入金額は5万1300円だったという。

「日本鞄協会 ランドセル工業会」のウェブサイトより。

この傾向は、人気ブランドの土屋鞄でも同じだ。平均販売価格は、10年前に比べて2倍近くになった。原材料費の高騰の影響もあるが、「高くてもいいものがほしい」という需要が強まったことがうかがえる。

・2000年~2005年 「3万円台」中心
・2006年~2009年 「4万円台」中心
・2010年~2012年 「5万円台」中心
・2013年~2015年 「6万円台」中心
・2016年~現在 「7万円台」中心

※土屋鞄がメインで販売する「牛革」素材モデルの平均価格(同社調べ)

「男子は黒」「女子は赤」という時代から様変わり

冒頭で「消費者意識」と記したが、ランドセルの購入者は保護者だ。その保護者の数も増えた。現在は少子化の影響で、子ども用の消費財は「財布が6つある」と言う。父親・母親と双方の祖父・祖母という意味だ。祖父母が孫に贈る場合だけでなく、みんなで資金を出して買う場合もあるだろう。そうなれば、「高くてもいいものがほしい」となりやすい。

制服とは違い、ランドセルは身体の成長にも対応できる。一般に児童は小学生時代に平均30センチ成長すると言われており、各メーカーとも成長に合わせて肩ベルトの長さが調節できるようにしている。土屋鞄では8段階調節となっている。

また色は、「男子は黒」「女子は赤」という時代から様変わりした。素材も色も多種多彩だ。土屋鞄では、素材は、牛革、コードバン、クラリーノ・エフ、ヌメ革などから選べる。色は定番色以外にも、ディープブルー、チャコールグレー、マロン、キャメル、ラズベリーピンク、ラベンダー、ピスタチオグリーンなどがある。2019年用は全56種類で、入学後に使う色鉛筆やクレヨンの色数よりも多い。好みの色は、使う児童の意向も優先されそうだ。