「介護離職」する人は大きな考え違いをしている

Mさんによれば、介護のために離職をしようという人の多くは、2つの考え違いをしているといいます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/shin28)

「ひとつは“介護は家族がするもの”という意識が強いことです。もちろん親御さんが要介護になったら一番近い存在である家族が介護の担い手としてなろうと思うのは当然です。肉親としての情もある、家族の責務という意識もある、親類縁者からの目がプレッシャーになることもあるでしょう。しかし、そのために自分の将来を犠牲にしてもいいということではありません」

2000年に施行された介護保険制度は、家族だけでなく、社会全体で介護を担うことが趣旨でした。介護保険制度の原点に立ち返れば、家族だけで無理して頑張ろうとするのではなく、専門家に任せるべきです。

「その家族の負担を軽減するためのサポート要員として、ケアマネジャーはもとより、役所の福祉課や地域包括支援センターの職員、介護士やデイサービスのスタッフといった介護サービス事業者などがいるわけです。介護に疲弊し限界を感じる状況に陥りそうな時は、われわれに対して素直にSOSを出してほしいし、甘えてもらって構いません」(Mさん)

大変な状況は1~2カ月「ずっと長くは続かない」

2つ目の考え違いは、介護で直面している大変な状況が「今後もずっと続くのではないか」と思っていることだそうです。

「介護者にとって先が見えないことは大きな不安になります。今の大変な状況が、このままずっと続くのではないか、もっと大変になるのではないか。こういう不安を抱えていると、とても仕事を続けていられないと思ってしまう。しかし、私の経験では大変な時期というのは長くて2カ月、多くは1カ月程度で脱するものです」(Mさん)

大変な時期とは、要介護者の体や精神の状態、認知症の症状が悪くなり、自分ひとりではどうにも対処できない状況。それでも「自分の親の一大事なのだから」と、仕事の傍ら、ケアするのですが、その対応に追われるのに疲れ切り、精神的にも追い詰められる。心配で眠れないことも多い。そんな時に、「せめて仕事がなくなれば……」と思ってしまうようです。

ただ、多くのケースを見てきたMさんによれば、1~2カ月すると次第に症状が改善したり、改善できなくても対応策が見つかったりすることがある、と言います。たとえば、デイサービスや、ショートステイを多くすることで切羽詰まった状況から抜け出ることができる、ということです。

「ケアマネは担当する利用者さんには等しく目配りすることが求められますが、大変な状況の利用者さんを優先して改善に努めることもあります。だから、“大変な時期”は利用者さんが思うほど長引きません。もちろん、それで大変さから完全に解放されることはなくて、また大変な時期はやってくる。大波がやってきては、それを何とか静め、また大波がきて静まる。介護というのは、そういう繰り返しなのです」