誤りその1:見込み客を探してしまう

そもそも見込み客とは何かを述べるために、まず、営業のステージを、お客様が抱える課題の状況に合わせて、川上→川中→川下と分類してみましょう。

川上営業とは、お客様が漠然とした曖昧な課題、潜在的課題を抱えている状況に対しての営業です。例えば、「わが社もそろそろ真剣にコスト削減しないとまずいかな」「業務の効率化を考えるべき時期かもしれない」と、漠然と課題を感じている段階。この状況でのアプローチが川上営業です。

この潜在的課題は、時間の経過とともに事態も進むので顕在化してきます。課題の中身が、一段階、より具体的になるのです。例えばコスト削減を考え始めていた企業なら、「手っ取り早いのはまず電気代かな」とか「業務効率を上げるために何かシステム刷新しよう」などと思案。この段階でのアプローチが川中営業です。

▼現在の営業のほとんどは「川下営業」

さらに、この思案が購買意欲に変わっている状態――それが川下です。そして、購買意欲となった瞬間に、その意欲は条件の検討に変わります。
例えば、「電気代を節約するために、社内の電気製品の入れ替え時期が来たら、電気代が少なくて済むエコ型の製品を買おう」とか「システムを刷新したいが、選択条件は納期とスペックと、予算に合った価格かどうかだな」と。このように完全に条件比較の段階に入った顧客に対するアプローチが川下営業です。

「見込み客を探す」とは、前述の「川上→川中→川下」のうち、川下あるいは川中の状況にあるお客様を探すという行為を指します。課題解決の方向性が具体的で、課題を明確に意識した状態のお客様への営業です。

現在の営業のほとんどは、この川下営業です。あるいは、時には川中営業のケースもあるでしょう。それ自体は、決して悪いことではありません。課題が明確で購買意欲もあるのですから、うまくそのお客様の考えている条件にジャストミートする提案や見積もりを提示すれば、すぐに購入を決定してくれ営業成果に結びつきます。

▼「川上営業」に条件競争から抜け出す鍵がある

しかし、この、一見手っ取り早い川下営業、川中営業だけを目指していると、条件競争に巻き込まれます。見積額が安いか、納期が早いか、製品のスペックはどうか等の条件競争。しかも、現在は「買い手側が非常に強い時代」なので、川下営業も川中営業も、ほぼ100パーセント、確実に条件競争に巻き込まれます。

一昔前は、他社との条件競争になるのは川下における営業だけだったと言ってもいいのですが、買い手優位の現代では、それが川中にまで及んでいるのです。

だからこそ、まだまだ課題が明確になっていない川上のお客様に、どれくらいアプローチできるかが今後の営業の大きなポイントとなるのは確実です。川上営業にこそ、条件競争のコンペ状態から抜け出す鍵があるのです。