企業を相手に仕事をしている人なら、多かれ少なかれ、「厳しい客」に鍛えられた経験があるだろう。「厳しい客」とは、言うことは言うが出すものは出すという客のことだ。一方で、言うことだけ言って、出すものを出さない客もいる。こういった「悪い取引先」に関わると、時間もお金もムダになる。いち早く、「厳しい客」と「悪い取引先」を見分けることが大切だ――。
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「条件に応じれば、仕事が取れる」という誘惑

発注する側の強みから、過度な値下げ要求を行い、相手企業の付加価値を認めない法人がある。相手にしなければいい、と言うのはカンタンだ。しかし、現実はそう甘くない。経営基盤がしっかりしている企業であっても、何らかの要因で一時的に顧客が減り、売り上げが落ちることはあり、売り上げがほしい時期に「悪い取引先」が現れると、「条件に応じれば、売り上げが増えるじゃないか」という悪魔のささやきに、心が揺らいでしまう。

「悪い取引先」を相手にするのは、ただただ大変だ。価格交渉だけの仕事となり、営業担当者は疲弊していく。一度価格の引き下げに応じれば、その後の商談でも苦しめられることになる。立場を悪用する担当者がいる「悪い取引先」にかかわると、売り上げは増えても、結局は余計な手間が掛かるため、自社の社員の士気は下がっていく。その結果として、そのほかの良質な顧客をも逃がしてしまうことになったら、目も当てられない。

「悪い取引先」が、自社の風土に問題があることに気づかずにいると、値下げ要求やリベートの要求がさらに増長する。「この仕事、下りさせていただきます」とは言えずにいると、どんどん悪循環に入ってしまう。

何かと災いをもたらす「悪い取引先」には、どんな特徴があるのか、見ていこう。