またドンキには、スムーズに居抜き出店するための秘策がある。それが「ソリューション出店」だ。文字どおり「問題解決のための出店」という意味で、狙いをつけるのは、まだ営業している赤字店である。

創業者・安田隆夫氏の著作には次のような一節がある。創業当時、有望な敷地をなかなか入手できなかった安田氏は、業界新聞で大手GMS系資本の外食チェーンの店舗リストラ策の記事を読む。そこで本部に飛び込みで訪問し、店舗開発部長に「退店予定物件があれば、ぜひウチに任せてくれませんか」と持ちかけたという。

業績不振に悩む店舗は、すぐにでも撤退したくても、地主との賃借契約が長期間残っていると、違約金などの問題もあって簡単には閉店できない。一方、地主としても、空き店舗になってしまうと賃料が入らなくなるので困る。そこで、ドンキが「身代わりに出店する」ことを持ちかけるのだ。ドンキとしても、通常の居抜き出店よりもさらに好条件で入居でき、初期投資を大幅に減らせる。

ユニーへの出資で、出店攻勢が加速か

ドンキの出店が加速している理由としては、17年8月にユニー・ファミリーマートHDと資本・業務提携したことも大きい。ユニー・ファミリーマートHDにとってはユニーの大型店事業が重荷になっていたが、再建の切り札としてドンキHDがユニーに40%を出資し、GMS約200店舗の一部をドンキに転換するプランが示された。手始めに、18年に6店舗をMEGAドンキにリニューアルしたところ、業績が急回復したという。店舗を運営しているのはユニーの社員だが、総店長以下、店舗の幹部スタッフとしてドンキの社員が進駐し、ドンキの商法を手取り足取り伝授している。

ドンキの強さは、何といっても圧倒的な集客力にある。増収増益を支えているのは、実は大量出店だけではない。月次の既存店売上高も14年7月以降、消費増税の駆け込み需要の反動があった15年3月などわずか2カ月を除いて、すべて前年をクリアしているのだ。顧客からどれほど支持されているかがわかるだろう。

ドンキの集客力の源泉は、(1)個店経営、(2)深夜営業、(3)スポット商品、(4)圧縮陳列の4つだ。