「他人と同じようにしなければいけない」「他人より勝っていなければいけない」「この会社しかない」というような考え方は、ぜんぶ余計な荷物ですわ。若いうちはええけども、年齢を重ねていく中で余計な荷物を一つずつ降ろしていって、自分を見失わないようにすること。これが、長く働くにはとっても大事なことやと思います。

コツ3:心を許せる人、本音をさらけ出せる人を持つ

【奥田】先生は70年近くサラリーマン医師として働いてこられました。組織では一番のストレス源は人間関係ですよね。先生はどのように対処されてきたのでしょうか?

【中村】いくつかの組織でサラリーマン生活をしてきた私が職場で大切だと思うのは、何においても人間関係。快適やなぁと思う人と深く付き合って、そうでもない人とは、そこそこの距離感であたりさわりなく付き合う。そういうことができていると、人生はとっても快適です。

私も患者さんとは互いの旦那のグチを言い合ったりして、中にはもう何十年という付き合いの患者さんもいるくらい。ここまでくると、患者と医者というよりも、人生の同志に近い間柄ですわな。そういう患者さんがいるおかげで、私もなかなか仕事をやめさせてもらえんのやけど(笑)。

でもこれが大切なことで、自分の本音をさらけ出せる相手がいるか、そんな人間関係の有無が、働く上では――もっというと、生きていく上で欠かせないことやと思います。

例えば、一見とっても元気に見える大きい会社の社長さんなんかも、フタを開けたら悩みだらけ。経営のストレス、家庭のストレスを抱えていて、でも誰にも相談ができなくて、精神科に来るというのはよくあることです。

みんな忘れがちなんやけど、どんな人も多かれ少なかれ人には言えない悩みを持っていて、「憧れのあの人」であっても、それは同じ。だから、本音を言える人が身近にいることで、あ~しんどいなぁというときも、ちょっと吐き出してラクになれます。